hmdの鐵たびブログ ローカル線の旅

のんびりローカル線の鉄道旅を、写真を中心に「見る紀行文」で長期連載しています。

【17】南アルプスとアプト式山岳鉄道を訪ねて・・・大井川鐵道井川線(2)川根小山駅から、アプトいちしろ駅へ。   


川根小山駅付近は、山も険しくなっており、大井川も激しく蛇行しているが、
両岸に僅かながら平坦地があり、そこに小さな集落が点在している。

また、袋の綴じ状になった場所もあり、道路の左右を見ると、どちらも大井川と言う所もある。
地元では、「牛の頸(くび)」と言われる奇景で、此処に大井川初の水力発電所が、
日英合弁会社であった日英水力電気株式会社によって、明治43年(1910年)に建設されたそうだ。
ダム(取水堰)は上流側のくびれ部に設置されたが、水害時の被害が大きく、
昭和11年(1936年)の大井川発電所の完成により、廃止となっているそうだ。




(グーグルマップストリートビュー・牛の頸付近【上の地図のカメラマーカー】)

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【停車駅】 〓→主な鉄橋
川根小山==奥泉==〓=1358アプトいちしろ
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川根小山駅を発車し、再び、鬱蒼とした森の中を登って行く。
二本の長いトンネルを通過し、小さな集落と所狭しに広がる茶畑が見えて来て、
道路橋の川根路橋を潜ると、奥泉駅(おくいずみ-)に到着する。
昭和34年(1959年)8月駅開業、起点駅の千頭駅から7.5km地点、所要時間約30分、
所在地は榛原郡(はいばら-)川根本町奥泉、海抜368m(千頭から+70m)になる。

売店もある大きな木造駅舎と島式一面二線の列車交換設備がある有人の途中主要駅で、
寸又峡や寸又温泉行きの連絡バスが発着する為、観光客が大勢下車する。
なお、寸又峡温泉までは、尾根をひとつ越え、バスで約30分の道のりになっている。
寸又峡温泉は、芸者、ネオンや野立て看板が無い、昔からの湯治場の雰囲気を残しており、
しっとりとした感触の湯質が特長の「美人の湯」として、人気がある。
寸又峡ほっとステーション(寸又峡美人づくりの湯観光事業協同組合)

ウィキペディア公開ファイル・奥泉駅構内(281kbyte)※乗車中、線路方向は撮影困難な為。

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(駅周辺には、川根茶の茶畑が広がる。この付近は、霧が良く発生し、良質な茶葉が採れるとの事。)

奥泉は、標高600-1100m級の山々に囲まれ、険しい尾根の東側がなだらかになっている
直径約600mの円形の土地で、この深山のほっとする場所になっている。
また、所狭しと、茶畑が広がり、川根茶の名産地になっている。
近くには、下開土遺跡(したのかいと-)があり、縄文時代から人が住んでいたそうだ。


(国土地理院電子国土Web・奥泉周辺)

奥泉駅を発車し、左カーブ先の二本のトンネルを通過すると、県道388号線の泉大橋が見えてくる。
川面からの高さは約70mあり、この先の上流にある長島ダム建設の為、
昭和58年(1983年)に完成した道路橋である。列車は、あの橋の根元を潜り抜けて行く。

IMGP1493.jpg

切り立つ様な150-200mの高低差のある尾根の直下を、大井川西岸に沿って走る。
そして、大井川ダム真下付近の鉄橋で大井川の西岸から東岸に渡り、
そのまま短いトンネルを通り抜けると、千頭駅から約30分で、アプトいちしろ駅に到着する。
この井川線は、前身の大井川電力専用線が、この付近まで開通したのが始まりになっている。
周りには、民家は全く無く、小さな待合室とトイレのみの単式一線の駅になっている。
国土地理院ウオッちず アプトいちしろ駅

この駅は、アプト新線切替後の新駅となっており、平成2年(1990年)10月に移転開業、
起点の千頭駅から9.9km、所要時間約30分、所在地は榛原郡(はいばら-)川根本町梅地、
海抜396mになり、千頭から98m登って来ている。
なお、旧駅の川根市代駅(かわねいちしろ-)は、先程通ってきた短いトンネル出口付近にあり、
昭和34年(1959年)の駅開業になる。

IMGP1504.jpg

ここで、アプト式電気機関車を列車最後尾に補機増結する為、約10分停車となる。
出発の合図の汽笛が鳴るまで、連結作業の見学も出来るので、降りてみよう。
駅構内の千頭方には、車庫、留置線や車両検修区(機関区/車両検査修理工場)もある。

アプトいちしろ駅から次の長島ダム駅までが、国内で唯一のアプト式区間になっており、
この区間だけが、直流1500Vで電化されている。

このアプト式区間専用機関車のED90形(ED902)は、同形式が3両が活躍中だ。
平成元年(1989年)製造、日立製作所製、全長14.0m、全幅2.0m、高さ3.9m、自重56.0t、
高さは本線の車両と同じであるが、車体幅が狭い馬面のヨーロピアンな雰囲気になっている。
台車は、レール走行用車軸の間にラックレール用の歯車軸があるAaA-AaA軸配置(計6軸)で、
搭載モーターは走行用4基、ラック用2基の計6基搭載の各軸吊り掛け駆動の重装備である。

千頭方にある大きな車庫から。ゆっくりと列車に近づいて来る。
レール中央部にあるギザギザの黒いラックレールにピニオンが噛むと、ガリガリと金属音がする。
意外にも、ギザギザの山も大きく、位相がずれた3条(列)仕様になっている。

IMGP1496.jpg
IMGP1497.jpg
(手旗信号で連結中。この後にジャンパ栓の接続も行う。)
128740693262616132324_IMGP1500.jpg

駅の隣を見ると、ブルーに輝く大井川ダムの小さな湖面が・・・
下流側に、鉄道用つり橋の市代吊橋があり、現存するものは珍しいそうだ。
昭和29年(1,954年)の路線延伸時に、線路のルートが変更された為に廃止になったが、
道路専用橋に転用されているとの事。

IMGP1501.jpg
IMGP1502.jpg

案内看板の上部も、吊り橋のモニュメントになっている。
また、湖面の色が独特で綺麗だが、南アルプスの岩石はコバルトを多く含む為、
雨水に溶け出して、この様な色になるらしい。

「フィー」と、出発合図の汽笛が鳴り、発車時刻なので、客車に戻ろう。
14時06分にアプトいちしろ駅を発車。此処から、日本唯一のアプト式区間を登り始める。

アプトいちしろ駅から接岨峡温泉駅(せっそきょう-)の間は、長島ダムの建設によって、
駅と線路が水没する為、平成2年(1990年)に、新線付け替えになっている。
その内、次の長島ダム駅までの1.5kmが電化アプト式区間になっており、
標高差89m、最大90‰の登り坂を約7分で登り切る。
国土地理院ウオッちず・アプト区間

駅を発車して200m程上がると、井川線としては、背の高いトンネルに入って行く。
このトンネルは普通の鉄道の大きさなので、井川線の車両の小ささが良く判る。
なお、新線区間は50kgレールを使い、ED90形の重量に耐えられる様に強化されているそうだ。

IMGP1505.jpg



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2016年1月20日再編集
2016年5月31日再編集(文体変更・画像整理)

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category: 南アルプス井川線紀行 全4話

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