hmdの鐵たびブログ ローカル線の旅

のんびりローカル線の鉄道旅を、写真を中心に「見る紀行文」で長期連載しています。

【244】草津温泉紀行2013 その2  


小生が乗車しているこの特急草津31号は、週末の土曜日、日曜日と祝日、
年末年始等の特別日のみ運転の臨時特急であり、
定期特急の草津1号の1時間前に、運行するダイヤが組まれている。
繁忙期の下り特急草津1号は、大変混むらしいので、この31号を上手く利用したい所だ。

この列車は、上野から高崎線と上越線を北上し、渋川からは、電化ローカル線である吾妻線に入り、
沿線の幾つかの有名温泉地の近くまで、アクセスしている典型的な観光特急である。

なお、行き先は、群馬県嬬恋村・万座温泉最寄りの万座・鹿沢口となっており、
上野を出ると、赤羽、浦和、大宮、高崎線主要駅の上尾、熊谷、高崎、
上越線に入り新前橋と渋川、そして、吾妻線の主要駅に停車する。

編成車両数は7両、上野方の1・2号車が自由席、残りが指定席で、6号車はグリーン車だ。
在来線の上野口や東京口では、珍しくなったとも言える「平サロ」であり、
遠目から見ると、変な凸凹が無く、列車全体の編成美を感じる所が良い所だ。



上野駅を出発し、車掌氏の行路案内アナウンスが終わると、
スピードが上った特急は、並走する京浜東北線北行き電車を気持ち良く何本も追い抜き、
堂々とした走りっぷりを早々と披露する。
特急の名に恥じない走りと、国鉄形の底力を見せる所が嬉しい。

シートから首を伸ばして、車内を見渡すと・・・
この自由席でも数人の乗客であり、空席が目立つ。
温泉地行き観光特急である事から、もしかしたら、指定席の方が乗客が多いかもしれない。

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赤羽、浦和、大宮と、東京周辺の乗客を乗せる為に停車するのだが、
今日は乗客がかなり少ない様だ。

近代的な巨大駅である大宮を発車すると、東北本線が右手に別れて行く。
上野が北の玄関口であるが、ここが本当の北への分岐点であり、古くからの鉄道要衝地だ。
首都圏有数の鉄道車両整備工場であるJR東日本大宮総合車両センターがあり、
一般の人にも人気の鉄道博物館も近年オープンして、鉄道的な見所が多くなっている所である。

左手を見ると、大宮総合車両センターの大きな建物が続く。
建物間の留置線に、特急あさま号のヘッドマークを出した189系特急電車国鉄色二編成が、
並んで留置されているのが見え、大変驚く。丁度、予備保存車の整備でもしているのだろう。

この大宮総合車両センターは、かつての鉄道の主役・蒸気機関車も復元整備出来る事から、
JRグループ内でも特に技術レベルが高い。
現在、JR東日本で復活蒸気機関車として諸方面で活躍しているC57-180号機、
D51-498号機や昨年復活したC61-20号機もこの工場で復元され、
秩父鉄道や真岡鐵道の蒸気機関車も委託整備を受けている程である。
ベテラン整備員の引退によって、古い鉄道車両の整備技術の継承も年々難しくなっているのだが、
JR東日本では、その点の対策もしている様で敬意を表したい所だ。
現在も、中型蒸気機関車のC58形1両を復元整備中だと聞く。

また、北並びは、人気の鉄道博物館がある。
敷地の最北端には、懐かしいツートン塗装のキハ11-25単行が車窓越しに見える。
小生は、意図的に造られた鉄道見学施設は好まないのだが、
人気が落ち着いた頃に、一度見学するのも良いかもしれない。



ここからの高崎線は、東京から信越・上越方面の重要幹線である位置付けから、
高規格な線路が敷設され、殆ど直線である高崎までは時速100km程の速度で走り抜ける。
この国鉄185系特急電車の営業最高速度は時速110kmであり、ほぼ目一杯なのであるが、
強敵の高速バスに対抗する戦略もあるのだろう。

幾分、古い車両なので、今の最新型車両よりはヨーイングが大きいが、
高速運転時でも、ピッチングの無い落ち着いた安定感がある乗り心地は、
国鉄特急らしいとも言え、嬉しくなる。
それも、重々しい低重心では無く、中庸なアップ感のある安定感は、
国鉄時代後期デビューの特急用空気ばね台車の特徴と感じる所だ。
コストダウンと軽量化の為、台車の枕ばねを省略した最近のボルスタレス台車には
感じられない落ち着きのある乗り心地で、高速運転時は顕著にその差が出るのだろう。

都会のビルが立ち並ぶ車窓から、徐々に、近郊田園風景に移り変わって行く。
埼玉は東西南北に大きな県であり、高崎線が通る中南部・利根川周辺は山も無く、
広大な平原になっている。
主要駅間は、近郊農業の広大な農地と防風林の中に点在する農家が見え、
長閑な風景を見ると、段々と気分も安らいで来る。

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また、上り列車とすれ違う時、右側の窓ガラスがドミノ倒しのようにガタガタと震えるのだが、
この音も最近は聞かれなくなった音だと気が付く。
列車走行音とは全く違う鉄道の音だが、今では、とても印象に残る音だ。



列車は、途中主要駅の上尾、熊谷の二駅だけに停車し、静かに発車して行く・・・。
高崎線内では、乗降は少ない様である。

上野を定時の9時に発車して、1時間20分が経過。
右手に大きな機関区が見え、青い塗色の電気機関車が何両も休んでいるのが見えると、
群馬県の最大都市・玄関駅である高崎に到着する。
かつては、信州長野までを結んだ信越線、新潟までの上越線、北関東を東西に横断する両毛線、
東京西部・八王子と結ぶ八高線、そして、高崎の西・下仁田まで結ぶ地元私鉄の上信電鉄が接続し、
長野新幹線と上越新幹線が分岐する重要駅である。

また、高崎も鉄道要衝地として古くから栄え、大きな機関区や鉄道関係の建物が建ち並んでいる。
鉄道ファン的には、上越方面の貨物列車を牽引する電気機関車の拠点地として有名で、
特に、貨物列車の電気機関車ファンにとっては聖地的な場所である。
機関車運転室側面にある機関区所属を示す「髙」の区名札は、伝統と格式を感じる程であり、
蒸気機関車のD51-498号機やC61-20号機も高崎の所属である。

高崎線の途中停車駅では、乗降が殆ど無かったのだが、
意外にも、この駅での下車客が多く、自由席に乗車していた1/4の乗客が下車してしまう。
上越新幹線が出来て以来、今では、高崎線の昼行特急はこの草津号だけなので、
観光特急の看板ではあるが、上野高崎間のリーズナブルな在来線特急の需要も少しあるのだろう。
乗客全員が温泉地行きと思ったが、意外である。

高崎での停車時間はわずかで、直ぐに発車する。
上越線に入り、やや速度を落として走るが、この先の新前橋と渋川までもそう距離は無く、
所要時間20分程度で走り抜ける。
上野から乗車している車内販売嬢も次の新前橋までの営業であり、
駅に到着すると、重そうな長ワゴンを降ろすのが見える。



10時40分に渋川に到着。大きな駅なのだが、人も疎らで大変静かだ。
有名温泉地である伊香保温泉の最寄り駅でもあるので、若干の乗客が下車している。
ここから吾妻線に入るアナウンスがあり、いよいよ、温泉特急色が一杯になる。

駅をゆっくりと発車すると、大きく左にカーブしながら急勾配の築堤を登り、
最後尾から先頭車が見える位、7両編成の列車が大きくくねる。
元・湘南特急が、この山間のローカル線に入線するのも面白く、
列車は速度を大分落としたが、意外にも速い。
また、ローカル線としては線路状態が良く、道床が改良されている様である。

車窓には、ローカル線らしい山里の風景が広がり始め、ずっと登り調子で、急カーブも多い。
単線電化のローカル線であるが、7両もの長編成特急が走るのは、全国的にも珍しいだろう。
吾妻線は、利根川支流の吾妻川に沿って敷設された典型的な山岳ローカル線であり、
南の榛名山と浅間山、北の草津白根山の間を走り、この先の沿線では渓谷風景も見られる。
なお、この吾妻線は温泉観光の為に敷設されたのでは無く、
元々は、群馬県六合村(現・中之条町)にあった大鉄山の群馬鉄山の鉄鉱石を運び出す
産業路線であった。後年、沿線には温泉が多数ある事から、観光路線に変容した。

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途中の中之条付近とその先までは、小さな町々に停車して行く感じであるが、
列車交換の為に停車した岩島を過ぎると、吾妻の谷間に広がる山里や
吾妻峡の渓谷美が高台から見えるハイライト区間だ。

また、所々で、巨大なコンクリート橋を建設しているのが目に付くが、
先年に話題になった八ッ場ダム建設による、橋梁付け替え工事現場である。
この吾妻線も一部区間が水没する為、付け替え工事が計画されているらしい。

トンネルも連続する区間だが、その中で、通過時間が約1秒だけのトンネルを通過する。
これが、JRの最短トンネルとして有名な樽沢トンネルである。
トンネル長は7.2m、車両1両全長の半分も無い名物トンネルであるが、
このトンネルもダム建設による水没の為、ルート変更区間にあるのが残念な所だ。
なお、国鉄時代の最短トンネルはこのトンネルでは無く、
国鉄越美南線(現・長良川鉄道)の郡上八幡手前にある中野トンネル(トンネル長7.0m)である。
当時の国鉄も公式認定しており、何故か、日本一短い鉄道トンネルは樽沢トンネルとの
鉄道雑誌等の記述間違いや誤解している鉄道ファンも多い。



上野駅を発車してから約2時間半、長野原草津口駅2番線に11時28分に到着。
この駅で下車である。
やはり、特急名の通りの草津温泉目的の人が多く、大勢の乗客が下車している。
向かい側の1番線には、当駅折り返しの高崎行き115系電車湘南色3両編成が迎えてくれ、
この国鉄形同士の並びも、一時、国鉄時代に戻った感じがして良い。

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※平サロ(ひらさろ)
2階建てグリーン車ではなく、従来の平屋(1階建て)のグリーン車のこと。
鉄道ファンの間での通称であり、サロはグリーン車を示す国鉄車両種別。

2016年7月11日再編集

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