hmdの鐵たびブログ ローカル線の旅

のんびりローカル線の鉄道旅を、写真を中心に「見る紀行文」で長期連載しています。

【85】木造レトロ駅めぐり・・・大井川鐵道2011(2)神尾駅 後半の部  


千頭方の駅出入口から、駅全景を見てみよう。
ホームと駅出入口は、コの字型の細い通路で連絡しており、
構内踏切を二回も渡るのも、珍しい配置かも知れない。
レール、木枕木、バラストと、鈍い錆色の一体感がある線路は、
最近の都市部の路線では、見られない光景になっている。

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(神尾駅全景。駅は大井川に平行して、南北に細長く配されている。)

神尾駅山側の土手には、大井川鐵道名物の「かみおたぬき村」があり、
36体の信楽焼きの狸が鎮座している。
木枕木を土砂止めにして土台を造り、車窓から見る目線の高さにしてあり、
神尾駅には停まらないが、SL列車も減速をして、車掌氏からの観光案内がある。

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(かみおたぬき村の発起人である、故・石原氏をモデルにした車掌狸がある。)

色々なポーズの狸がいる中、あの石原狸も健在だ。
制帽を被り、マイクを持った車掌姿の狸は、「大鐵の名物を作ろう。」と、
このたぬき村を創った初代SL名物車掌の故・石原〆造氏を偲んで、特注で作られたものである。
なお、大鐵OBが石原氏の遺志を継ぎ、村長として、草刈りや据え直し等の手入れをしているとの事。
たまに、襷を掛けて、SL列車の乗客に手を振っている事がある。

千頭寄りのポイント付近には、レトロな狸が並んでいる。
実は、平成15年(2003年)の8月17日、連続雨量400mmを越える集中豪雨の為、
ホームの南にある崖が大規模な地すべりを起こした。
30体近くの狸が、崩落した土砂に飲み込まれたが、この5体の狸だけ無事であった。

大井川鐵道社員、地元住民、企業や鉄道ファンの協力で、復旧工事や募金が行われ、
平成17年(2005年)3月に、ホーム北寄りの向かいに移動し、かみおたぬき村が復活している。
なお、前年の平成16年(2004年)3月に、線路は先行復旧した。

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(崩落を免れた狸達。右からふたつ目は、破損してしまっている様だ。)

構内踏切先の狸の前に階段があり、賽銭箱も置いてあるので、狸大明神と言った所だ。
崩落時は、幸いにも犠牲者が出なかったので、狸が守ってくれたと言う事。

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(狸大明神。)

構内踏切の先には、アルミ柱製の開放式の小さな待合室がある。
大崩落した崖の復旧作業をする際、重機を構内に持ち込む為に、
古い木造待合所は取り壊されたとの事で、残念な所だ。

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(ベンチの上に茅葺き屋根の模型がある。ケースの中には、駅ノートが入っている。)
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(列車は一時間に上下共に大凡一本で、一日の駅利用客数は数人らしい。)

地蔵峠トンネルの近くに行って見ると、ポータルはレンガ積みの古いトンネルである。
神尾駅の開業は昭和3年(1928年)で、隣の福用駅はその翌年であり、開業当時のものだ。
また、入口横の標識を見ると、トンネル内は半径300mのカーブと16.7‰の上り勾配になっている。

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(地蔵峠トンネル。)
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(保線小屋。かなり大きいので、元は駅舎だったかもしれない。)

この場所に合わない、灰色のISDN公衆電話スタンドも、何故かひっそりとある。
場所が場所なので、緊急時には役に立つかも知れない。
なお、駅前には、民家、商店や自動販売機機は、ひとつも無い。

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(神尾集落に繋がる道。)

この一本道が唯一の連絡路になり、神尾集落までは約1km、徒歩で約15分掛かる。
国道には、集落を経由し、折り返す様に接続しているので、結構な距離がある。
土手に小さな花桃が咲き、反対側には、古い木造トイレと自転車置場も設置されている。

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なお、神尾集落は、交通が大変不便な場所にあるが、
平安時代末期の源平合戦こと、治承・寿永の乱(じしょう・じゅえい-)で敗れた平家の落人が、
此処に住み着いたのが始まりだと伝えられている。
集落の山際の高台には、1400年もの歴史があると言い伝えられる若宮八幡神社が鎮座する、
歴史のある里になっているそうだ。現在、神尾集落には16世帯、約50人が住んでいる。

なお、神尾からは、下流に広大な平野部が広がり、
上流側から見ると、南アルプスの稜線の末端(尾)にあたる。
江戸時代中期の遠江掛川藩で編纂された地誌「掛川志稿(-しこう)」によると、
「天王、天王平にあり。天王平の尾崎(山裾の突端)に天王社の祠ありしより村を神尾と名付く。」
と書かれおり、天王平のはっきりとした場所は判らないが、
大井川の神がいると考えられた大井川の上流域、南アルプスの山々の事らしい。
地元の若宮八幡神社とも、天王社と深い関係があるかも知れない。

また、神尾駅から大井川の対岸には、神座地区(かんざ-)がある。
此方の西岸は神尾、東岸が神座と、両方共に「神」の字が付くのは、
どうやら、大井川と地元大社の大井神社が関係するらしい。
元々、大井川鐵道本線の終点千頭駅の上流に、神社が鎮座していたと言われ、
昔は巨大な暴れ川だった大井川の大洪水と共に御神体が流れ着いて、
此処に祀られたという言い伝えがあるそうだ。
神座地区は、北端の川際に神社があり、この地区を守る様な感じになっている。
この付近は、古来からの水害頻発地帯で、豊かな自然の恵みをもたらす反面、
度々、大洪水を起こして人々を苦しめてきたが、明治時代に大堤防を完成させたとの事。
大井神社公式HP


(国土地理院国土電子Web・島田市神座地区大井神社付近。)

大井川側は、木立が生い茂っている為、展望が少し悪いが、
大迂回をしている大井川の雄大な流れを見る事が出来る。
まだ、朝日が登ったばかりで、清々しい。

左から突き出ている突端の川寄りに、神尾の集落があり、
遠く向こうの対岸には、鵜網(うあみ)と言う集落がある。
両集落は目鼻先だが、橋は架かっていないので、行来は出来なくなっている。

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(大井川の大蛇行部と神尾半島。)
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(ホーム中央の向かいにある、一本だけの大きな花桃は、この駅の名物になっている。)

良い景色と静かな環境に、のんびりとした気分になって寛いでると・・・
あっという間に約1時間半が過ぎている。
8時32分発の下り千頭行き、元・南海電気鉄道21000系電車がやって来る。

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2016年1月21日再編集
2016年6月18日再編集(文体変更・文章追加・画像整理)
2017年3月15日再編集(画像調整)

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category: 大井川鐵道本線2011 全14話

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