hmdの鐵たびブログ ローカル線の旅

のんびりローカル線の鉄道旅を、写真を中心に「見る紀行文」で長期連載しています。

【53】清流長良川と奥美濃を訪ねて・・・長良川鉄道(18)大矢駅  




上り、下り共に列車を見送り、静かなローカル駅の静寂が訪れる。
野鳥の鳴き声と田畑を耕す耕運機のエンジン音が、遠くから聞こえてきて、とても長閑な雰囲気だ。
この大矢は、長良川の東岸に約1km四方の平坦地が開けて、田畑が広がっており、
遠く西方には、瓢ヶ岳(ふくべがたけ/標高1,163m)を望む。
また、牡丹園で有名な桂昌寺(けいしょうじ)や古道も残り、
山の中腹には、東海北陸自動車道の高架橋が見える。

長良川に橋が架かっていなかった頃、対岸の集落に郡上街道が通っていた為、
この大矢側と結ぶ川渡しがあったそうだ。駅のすぐ西側には、石積みの大矢港の跡が残っている。
現在は、大矢地区を挟む様に、新吉田橋と下田橋の二本の道路橋が架けられている。


(国土地理院 国土電子Web 大屋駅周辺 ※新吉田橋のすぐ上流の旧橋は、撤去されている。)

この大矢駅は、国鉄時代の昭和2年(1927年)10月に美濃下川駅として開業し、
翌年5月に深戸駅まで延伸されるまで、約半年間は終着駅となっていた。
長良川鉄道に転換した昭和61年(1986年)12月に、駅名改称になっている。
なお、起点の美濃太田駅からは31.8km地点、所要時間は約1時間、
所在地は郡上市美並町大原、標高134mになる。

現在は、無人駅化され、南北に配された二面二線の千鳥式ホームと駅舎側に貨物側線が1本残っており、
美濃市駅から郡上八幡駅の間で、唯一列車交換が出来る駅になっている。

郡上八幡駅と似た、貫禄のある、屋根の角度が急な大型木造駅舎である。
待合室に入ると、10畳以上の広さがあり、窓沿いの据え付けベンチ以外は何も無い。
出札口等は、テーブルのみ残っていて、無造作に板が打ち付けられている。
また、駅舎並びの小屋は、信号てこ小屋らしいが、がらくたが放り込まれて、かなり荒れている。

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(大矢駅本屋。)
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(本屋並びの小屋。郡上八幡駅の灯室と似ている建物である。)

郡上八幡寄りから、美濃太田方とホーム全景を眺めてみよう。
構内の複線部分がかなり長いのは、この駅に安全側線が無い為、
過走(冒進)事故防止と、客貨混合列車や貨物列車の長編成に対応する為だろう。

国鉄蒸気機関車時代の越美南線の客貨混合列車は、蒸気機関車の直後に数両の貨物を連結し、
最後尾に郵便車を含む4両程度の客車を連結する事もあったそうだ。
客車をホームの位置に合わすには、蒸気機関車と貨車がホームを行き過ぎる必要があり、
各駅で貨車の解結も行う為、美濃市駅や大矢駅の列車交換可能駅では、
ホーム先の線路がとても長く造られているらしい。

なお、安全側線とは、ホームの停止位置を越えて、列車が本線に進行した場合、
対向列車との正面衝突の危険が非常に高い。
本線分岐器(ポイント)の前に道床外側に逃がす短い側線を設置し、
冒進時は砂利に突っ込ませて回避し、緊急停車させる鉄道保安設備の事だ。
ウィキペディア公開ファイル 安全側線

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(大矢駅全景と美濃太田方。)

郡上八幡方には、保線詰所とポイント横に小屋があり、倉庫として使われている様子だ。
国鉄時代から、保線区が置かれていたのであろう。レールや枕木等の鉄道資材が、
大量に保管されている。

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(郡上八幡方。)

駅前に出てみると、砂利の大きな広場になっており、40m先に県道と接続している。
バスやタクシーの乗り場は無く、古い桜並木があり、地元では隠れた花見の名所らしい。
今では、人気の無いひっそりとした駅だが、沿線の中核駅として栄えたのだろう。

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貨物側線とは駅舎の北側、郡上八幡方に残っている。
ホーム擁壁はコンクリート板で補修されていて、かなりの高さがある。
貨物は昭和49年(1974年)10月まで、取り扱いがあったそうだ。

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(貨物側線と改修された貨物ホーム。)

現在は、保線用に使われている様子で、真新しい木枕木が積み上げられている。
防腐剤として染み込ませてある、あの独特なクレオソートの匂いが、懐かしい。
近年は、耐久性の良いコンクリート製枕木が多いので、木枕木は珍しくなっている。
なお、枕木は意外と大きく、標準の並枕木は長さ210㎝・横20cm・厚さ14㎝、重さは約50kgもある。
明治33年(1900年)に定められた仕様で、檜(ヒノキ)等の狂いの少ない良質な樹種が使われている。

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(真新しい木枕木。妻面の楕円は、割れ止めの鋼製リングである。
 中央には、幅広タイプの枕木も置かれており、レールの継ぎ目やポイント部分で使われる。)

次の上り列車は1時間後なので、構内踏切の階段に腰掛けて、缶コーヒーを飲みながら一休みしよう。
カバンを置いてみると、あの「いい旅、チャレンジ2万キロ」と言う感じだ。

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(構内踏切から撮影。)

陽も徐々に傾き、夕方の黄昏感になって来た。そろそろ、下り2番線ホームに移動しよう。
下り2番線ホームの郡上八幡方に大きな桜の木があり、ホームの半分は野原に戻っている。
小さな野花が、静かにいっぱい咲いているのをみると。とても落ち着く。

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至福の1時間は、あっと言う間に経過し、
上り16D・16時24分発の美濃太田行き2両編成がやって来る。

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2015年11月24日再編集
2015年12月23日加筆
2016年6月16日再編集(文体変更・文章追加・画像整理)

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category: 長良川鉄道 全22話

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