hmdの鐵たびブログ ローカル線の旅

のんびりローカル線の鉄道旅を、写真を中心に「見る紀行文」で長期連載しています。

【347】初夏の大洗鹿島線紀行 その2「水戸から大洗へ。」  


先ずは、大洗鹿島線の主要駅である大洗(おおあらい)駅に行ってみよう。
この水戸から三つ先の駅になる。
大洗鹿島線の路線キロは53.0kmあり、起点終点を含めて16の駅が設けられ、
大洗駅と新鉾田(しんほこた)駅が沿線の主要駅になっている。
茨城県内でも、人口が少ないエリアを縦走するので、駅間距離は比較的長い路線である。





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水戸0846===東水戸===常澄===0902大洗
下り1125D・大洗行(8000形2両編成・←8001+8003)
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この列車には、車掌が乗務しており、戸締めと運転士への連絡用発車ブザーを鳴らした後、
8時46分に2両編成の大洗行き列車が定刻発車となる。
ドッドッドッ・・・と、力強いディーゼルエンジン音と共に、軽快に加速して行く。
この8000形のディーゼルエンジンは新型であるが、あの国鉄DMF13系の流れを組む鉄道用だそうで、
中低域がこもった音の昔の国鉄気動車風であるのが楽しい。
なお、大洗鹿島線では、東京に近い鹿島神宮方ではなく、水戸方が上りになっているので、
この列車は下り列車になる。

列車は水戸駅から日立方に東進し、しばらくは、複線の常磐線の南側を並走して行く。
1.4kmほど走ると、単線の高架橋に上がり、千波湖(せんばこ)から流れ出る那珂川支流に架かる
若草色の大きな三連トラス橋を渡りながら、南東に進路を変えて、常磐線とお別れになる。
また、地方ローカル線であるが、踏切無し・ロングレールの高架スラブ軌道(※)の直線区間になり、
この先の大洗までは、地形に左右されない鉄道建設公団時代の高規格高架線に変わる。

住宅と田畑、小森が混在する中を、車窓から見下ろしながら走る。
高規格な上、線路は真っ直ぐなため、時速は90kmと亜幹線の電車並みの高速だ。
地方ローカル線のディーゼル普通列車としては、全国でも、トップスピードだろう。
ちなみに、国鉄簡易線の最高速度は時速65kmであり、速度面で見るならば、乙線規格並みである(※)。

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(トラス橋を渡り、高架スラブ軌道を高速で走る。水戸〜東水戸間。※最後尾から水戸方を撮影。)

グイングインとブレーキが利き始めると、高速通過が可能な大型Y字スプリングポイントで、
線路がふたつに分岐し、最初の停車駅である東水戸駅に到着。
駅舎は高架下にあり、コンクリートのホームしかないので、やや殺風景な駅になっている。
ここからは、人家は少なくなり、左右に広がる大水田の中を真っ直ぐに走り抜けて行く。
車窓からは、農家の人達が総出で田植えをし、トラクターが走り回っているのが見える。
この付近は、那珂川右岸の温暖で肥沃な低地帯が広がる、水戸の米どころになっていて、
特別栽培米(ブランド米)「水戸っ穂風彩常澄」の生産にも、力を入れているとのこと。

なお、列車の左窓後方に巨大な白い塔が見えるが、
対岸のひたちなか市にある、日立製作所水戸工場のエレベーター試験棟G1タワーだそうだ。
高さは213.5m(塔の部分は203m)もあり、世界一の高さのエレベーター試験棟として、
ひたちなか市の新しいまちのシンボルになっている。

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(東水戸〜常澄間の田園風景。左後方は、水戸の町並みである。※最後尾から水戸方を撮影。)
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(田植えに忙しい稲作農家と日立G1タワー。)

そのまま、直線を駆け抜けて行くと、東水戸道路をアンダーパスし、常澄(つねずみ)駅に停車。
この先、線路は大きく右に90度近くカーブをして、南東から南に進路を変える。
後方運転台からも、その巨大なカーブの高架線橋脚が、ドミノ倒しの様に並ぶのが見える。

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(常澄〜大洗間の通称「常澄大カーブ」。※最後尾から水戸方を撮影。)

線路が直線になると、進行方向に大きな町並みが見え始め、
那珂川最下流の支流である涸沼川(ひぬまがわ)を渡りながら、減速をすると・・・
横幅が広がり、盛り土部に接続して、側線や留置車両が並んでいる大洗駅に到着。
この列車は大洗止まりなので、乗客がどっと下車し、殆どの乗客は足早に改札口に向かっている。

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(涸沼川を渡る。この県道橋が、大洗市街地への玄関道路になっている。)



乗客は階段を降り、ホームが静かになったので、見学と撮影をしてみよう。
この大洗は、那珂湊(なかみなと)の対岸、那珂川河口の南にある人口約1.7万人の古い港町だ。
昔から、大洗・那珂湊・平磯は、「三浜(さんぴん)」と呼ばれ、漁業で大変栄えたと言う。
現在も、地場産業である漁業を中心に、温暖な気候を活かしたマリンレジャーも盛んで、
北海道苫小牧行きのカーフェリーも就航しており、町の名を聞いたことがある人も多いだろう。

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(駅名標。6000形を模した、オリジナルプランターも可愛い。)

港から離れた内陸部に駅があるため、街の中心部や大洗港へは、車で数分から10分程度らしい。
南北に配された二面三線の単式・島式ホームに、幾つかの側線を配しており、
鹿島臨海鉄道の本社と車両区(車庫と車両整備工場)も置かれている。
駅の開業は、大洗鹿島線開通時の昭和60年(1985年)3月14日、起点の水戸駅からは11.6km地点、
3駅目、所要時間約15分、所在地は茨城県東茨城郡大洗町桜道、標高13mの終日社員配置駅である。
なお、この大洗鹿島線も、平成元年(1989年)から貨物列車が走っていたが、
平成8年(1996年)に廃止となっており、今は旅客専用線になっているそうだ。

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(大洗駅ホーム。開業時に導入された6000形気動車が、鹿島神宮方から到着し、この駅止まりとなる。)
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(高架下の連絡通路には、開業や周年記念ヘッドマークが展示されていた。)

階段を降り、薄く暗い幅広の連絡通路を通ると、改札口に接続している。
やや殺風景な国鉄末期風デザインであるのは、公団建設らしく、改札の横には小さな構内売店もある。
反対側の奥の方には、大洗駅インフォメーションセンター(観光案内所)兼グッズショップがあり、
若い男性達が集まっていて、何だか賑やかだ。

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(改札口。国鉄風の六角形金属改札ボックスも残る。)
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(待合所と大洗駅インフォメーションセンター。スペースは結構広い。)

インフォメーションセンターの前には、踏切警報機と連動制御盤が展示されている。
連動制御盤とは、駅や信号所内の分岐器(ポイント)と信号機が錯誤しないように制御する保安装置で、
分岐器を鎖錠(向きを固定)し、信号機の現示と一致させ、それらの誤操作による鉄道事故を防ぐものである。
これは、鹿島臨海線の知手(しって)駅にて、平成22年(2010年)3月末まで使われていたものだそうだ。
また、自由にデモ操作できるのも、珍しいと思う。近年は、コンピューターで電子制御化されている。

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(旧・知手停車場連動制御盤。これは小型であるが、大きなものは、たんすサイズのものもある。)



駅前に出てみよう。
黒潮の流れに近い大洗は、とても温暖な土地柄と聞いているが、本当にムワッと暑く感じる。
ホームは盛り土の一段高い場所にあるので、その手前に、二階建ての駅舎が建てられている。
駅前には、大きなロータリーも設けられており、町中心部や大洗港への路線バスも発着している。

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(大洗駅外観。外壁は、レンガ風にリニューアルされている様だ。)
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(イルカのオブジェが、港の街であることを実感させる。)

東京から離れた地方ローカル線としては、とても若い人達が多いと感じるが・・・
この大洗町は、某アニメーションの設定舞台となり、若い男性ファンの訪問が増えているとのこと。
いわゆる、聖地巡礼であるが、昔の映画でもあったので、同じ動機であろう。
過疎化や観光衰退に悩む大洗町では、町おこしや観光に積極的に活用しているそうだ。
ふと、周りを見ると、「萌え」と日本語がプリントされたTシャツを着た、
どこかの国の金髪外国人の若い男性二人連れも、熱心にカメラに収めている。

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(駅名標と某アニメーションの顔出し歓迎看板。)

きっかけは色々あるだろうが、この大洗鹿島線に乗って、来町する人が大幅に増えたそうなので、
経営の厳しい鹿島臨海鉄道にとっては、とても良いことである。

(つづく)



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(※スラブ軌道)
バラスト(砕石)で枕木とレールを固定せず、コンクリートパネルに固定する省力化軌道。
狂いが少なく、メンテナンスが容易であるが、走行反響音が大きい。新幹線などでも採用されている。
(※線路規格)
国鉄の線路規格として、レールの重さや勾配、枕木数などによって等級があった。
特甲線(大幹線)、甲線(幹線)、乙線(亜幹線)、丙線(地方線)、簡易線(ローカル線)。

【参考資料】
週間歴史でめぐる鉄道全路線 公営鉄道・私鉄 No.15 鹿島臨海鉄道ほか(朝日新聞出版・2013年)

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