hmdの鐵たびブログ ローカル線の旅

のんびりローカル線の鉄道旅を、写真を中心に「見る紀行文」で長期連載しています。

【304】かぶらの里、シルクの鉄路・・・上信電鉄(2)上信電鉄高崎駅と車両区。  


さて、上信電鉄の旅の始まりである。
いつもながら、旅の始まりは気分も高揚し、楽しい。
改札口の駅員氏から、フリー乗車券に赤日付スタンプを入れて貰い、ホームに向かおう。

上信線のホームは、中央部分を抉った様な行き止まり頭端式になっており、0番線が振られている。
国鉄・JRと駅構内で直接連絡していた頃は9番線であったが、
平成17年(2005年)の改札分離の際、0番線に変更されたそうだ。
0番線と言うと・・・個人的には、出雲市行き夜行鈍行の山陰号に乗る為に並んだ、
昔の京都駅山陰線ホーム0番線が思い出される。

なお、1番線ホームよりも手前にホームが増設されると、この0番線が使われる事があるが、
近年、新たに使われる例は大変珍しいと言える。
また、向かいのJR側は、混雑時の降車ホームとして使われている。

かつての上信電鉄高崎駅は、現在よりも南に独立してあったらしく、
大正13年(1924年)12月の改軌の際、省線(後の国鉄線)との連絡運輸(※)の為、
現在のJR高崎駅寄りに延長し、駅構内に組み込まれたそうだ。
当時は、客貨混合列車運行の為、旅客用と貨物用にそれぞれ別に設置した島式ホームで、
途中駅の列車交換駅も島式ホームに全て改築されている。
また、検修区、乗務員詰所、貨物取扱所、事務室、社宅や物置も同時期に新設されたとの事。

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(上信電鉄ホーム。ホームはJRの所有になっており、上信電鉄が賃貸している。)

かつては、三両編成の電車を運行していたので、ホームの長さもその分ある。
0番線ホームの壁側には、懐かしい昭和風の広告や木造ベンチ等がずらりと並ぶ。
床はコンクリートパネル、旅客上屋は鉄骨柱の簡易なトタン屋根なので、
戦後昭和の頃に改築されたのだろう。

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(名物の駅名標。太いゴシック体の青文字が印象に残る。他の上信線の駅には、見られない。)
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(国鉄風プラスチックベンチ、据え付けのロングベンチ、木製ベンチと全て揃っている。)

沿線の見所も多く、世界記憶遺産登録を目指している古代の三つの石碑である、
「上野三碑(こうずけさんぴ)」や、平成26年(2014年)6月に世界遺産に指定された富岡製糸場、
上州一ノ宮の一之宮貫前神社(いちのみやぬきさき-)、下仁田の妙義山が代表的観光地になっている。
特に、富岡製糸場が世界遺産になってからは、乗車率が35%も増え、
週末の入場券付き往復割引乗車券が、それまでの五倍も発券するとの事だ。
勿論、富岡製糸場や駅から至近な観光地は、この旅で途中下車して訪ねてみよう。

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(沿線観光案内板。)
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(富岡製糸場観光案内看板。真新しい看板で、これだけ今風である。)

ホーム南端には、構内分岐器(ポイント)の取扱所らしい小屋が一段高い所にあり、
廃車された電車を再利用した待合室も設置されている。
なお、列車集中制御装置(CTC;Centralized Traffic Control)を導入しており、
本社運転指令所からリアルタイムに全線の列車、分岐器や信号等を監視制御している。
JRや大手民鉄では一般的であるが、この規模の中小民鉄に導入している例は珍しい。

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(取扱所と電車型待合室。)
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(ホーム南側からの全景。)

この電車型待合室「絲綢之間(しるくのま)」は、廃車されたデハ203を再利用したものである。
上信線ホームには待合室が無く、富岡製糸場が世界遺産に登録されて、観光客も急増している事から、
高崎産業技術専門校の生徒126人が製作協力し、平成27年(2015年)4月にオープンした。
車体は、そのまま側線のレールの上に乗っており、ホームからの渡り板も手作りだそうだ。

室内に入ると・・・とても暖かい。入口側のロングシート前に長テーブルが置かれ、
奥にJRより譲渡された、普通車グリーン席用のリクライニングシートが設置されている。
勿論、冷暖房も完備されており、出入り口横に飲料の自動販売機もある。
北関東の夏はかなり暑く、冬は季節風が山から強く吹き下ろす日が多いので、大変助かるだろう。

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(昭和39年・東洋工機製のデハ203。下仁田方に閉鎖された運転台がある。)

なお、ホーム南側には、上信電鉄の本社ビルと車両区、検修区(車両検査修理工場)が置かれ、
発車すると、複雑な線路配置の車両区の中を走って行く感じになっている。

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(上信電鉄本社ビル。歴代社長には、地元の中曽根康弘元総理の実父が務めていた事もある。)
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(南側道路からの車両区全景。手前西側に検修区の建物がある。※この二枚は、追加取材時に撮影。)

電車型待合室から、凸型電気機関車デキ1形(1)が見える。後ろは、ED316(31形6)である。
デキ1形は、「上州のシーラカンス」の異名がある上州電鉄のマスコット的電気機関車で、
デキ1・3の2両が現在も本線運行が出来る状態になっている。
主に、イベント列車や貸切列車、工臨列車(こうりん-/※)で使われているそうだ。

このデキ1形(1・3)は、大正13年(1924年)の全線電化直前に、
ドイツ・シーメンスシュッケルト社から3両輸入された、
自重30トン級の中規模鉄道向け直流電気機関車で、
国内に現存する凸形電気機関車としては、大型の部類に入る。
主に、セメントや石灰石の貨物列車を運行し、
沿線住民からは、「おめしれっしゃ」と言われていたそうだ。
なお、貨物列車なのにお召し列車(※)とは面白いが、昭和9年(1934年)11月には、
本物の鉄道省蒸気機関車牽引のお召し列車が運行されており、
電化後に黒い蒸気機関車が走るのは珍しかった事や同じ黒い車体から連想したのだろう。

また、JRとの渡り線も繋がっているので、タイアップイベント時には、
デハがJRの留置線に行って、国鉄機関車や蒸気機関車と並んだり、
JR東日本が所有する旧型客車スハフ42(国鉄スハ43系緩急車※)を借り受けて、
上信線内で牽引する粋な企画も催された事がある。

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(デキ1とED316。後ろには、上信電鉄本社ビルが見える。)

後方にあるED316は、国産凸形電気機関車を箱型に改造した車両で、動態保存機(※)であるが、
列車自動停止装置(ATS)が未設置の為、本線走行が出来ない。
元々は、芝浦製作所・石川島造船所(現・東芝とIHI)製の伊那電気鉄道デキ1形電気機関車で、
シーメンスよりもひと回り大きく、自重40トン級である。
伊那電気鉄道が国有化され、買収電気機関車の国鉄時代を経て、上信電鉄に譲渡されたとの事。



また、車両区には、現役の電車の留置の他、廃車後に倉庫として使われている100形電車や
生石灰輸送用に使われていた二軸有蓋貨車(-ゆうがいかしゃ※)テム1形も留置されている。
テム1形は10両中、8両が廃車されたが、動態保存車が2両(テム1形1・6)あり、
デキ1形とイベント運行する事がある。
なお、車両種別の「テ」は珍しいが、当時は木造車体の貨車が一般的であったので、
「テ=鉄板=鋼鉄製=鋼製車体」の意味である。
車番下の二重線は、他社線直通可能車(国鉄と民鉄、または、民鉄同士間)を示す。

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(テム1形1。かなり錆びており、吊り扉下部に腐食と鉄板の変形があるので、
   近く廃車される運命かもしれない。なお、6は再塗装されており、綺麗な状態だ。)
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(100形103編成。西武鉄道からの譲渡車で、正面は国鉄101系電車に良く似ている。
   この小豆色に青帯の塗装は、上信電鉄の旧標準色との事。)



一通りの駅の見学をして、時計を見ると・・・時刻は8時10分過ぎである。
そろそろ、列車に乗る事にしよう。

一線区だけ途中下車をするローカル線の乗り方としては、起点駅から順に途中下車する方法と、
最初に終点まで一気に行き、起点駅に引き返しながら途中下車する方法のふた通りがある。
正攻法で行きたい場合や路線キロが短い場合は、順に途中下車する方が良い。
上信線の路線キロは33.7kmと特に長い方ではないが、木造駅舎や観光地が多い様なので、
今回は引き返しながら途中下車する方法にしよう。
この方法は、時間ロスや帰路の負担が少なくなるので、途中下車が多い場合や遠征時に適している。

暫くすると、上信電鉄で最新の7000形電車2両編成が到着する。
折り返しの8時21分発に乗車して、先ずは、終点の下仁田(しもにた)まで行ってみよう。

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(富岡製糸場の世界遺産登録に合わせて新造された、自社発注オリジナル車両である。)




レールあやなす操車場
上信電車は高崎を
汽笛の音も高らかに
今ぞ出立つ旅心

上信電鐵鐡道唱歌より/北沢正太郎作詞・昭和5年・今朝清氏口伝。



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車両区の撮影は、追加取材時の夕方に行っています。

(※連絡運輸)他社線同士の改札を通らない旅客乗り換えや貨車の直通のこと。
(※緩急車)車掌室があり、手ブレーキと車掌弁(車掌用の非常ブレーキ装置)がある車両。
(※工臨列車)保線工事の臨時列車。保線作業員、資材やバラスト(線路に敷く砂利)等を運ぶ。
(※お召し列車)天皇陛下や皇族が利用する特別専用列車。
(※動態保存)動く状態で保存してある鉄道車両。動かないのは、静態保存と言う。
(※有蓋貨車)雨風をしのげる屋根が付いている貨車。屋根が無いのは、無蓋貨車と言う。

【参考資料】
「上信電鉄百年史-グループ企業と共に-」(上信電鉄発行・1995年)
「ぐんまの鉄道-上信・上電・わ鐵のあゆみ-」(群馬県立歴史博物館発行・2004年)

2016年12月22日(画像差し替え高解像度化・校正)

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category: 上信電鉄1日目 全17話

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