hmdの鐵たびブログ ローカル線の旅

のんびりローカル線の鉄道旅を、写真を中心に「見る紀行文」で長期連載しています。

【168】信州松代、あるローカル線の最後の秋を訪ねて・・・長野電鉄屋代線(13)松代駅 その3 短尺レール、転轍機操作てこ小屋&木造駅舎。  


須坂方のスロープ下の通路から、1番線の短尺レールが見られる。
目線を落として、レール側面の刻印を探してみると・・・
「9249 OH A」、「11211」、「C」と刻まれているレールを発見。
しかし、メーカー名や年号は見当たらない。
100年近く前のレールと思われますので、錆により、刻印が一部崩れている可能性もある。

大正時代の輸入レールと思われるので、官鉄(後の国鉄)の時代や、
現在のJIS(日本工業規格)に基づいた、国産レールの規格表示とは異なり、
四-五桁の数字は、他にも色々な数字がある事から、製造番号(ロット番号)かも知れない。
また、古いアメリカ製輸入レールには、数字でレール重量と断面を示す場合があるが、
数字がバラバラで統一性が無い為、その可能性は低い。
(30kgレールならば、どのレールも60から始まるはず。※60ポンド=30kgを表示。)

OHは製鋼炉の種類、平炉製鋼法”Open Hearth”の表示である。
明治34年(1901年)から、国産レールを生産した国営八幡製鉄所は、
ドイツの技術指導を受けた転炉法だった。
昭和3年(1928年)から平炉法になっている事と、大正初期は生産が少なかったので、
輸入レールである事には間違いが無いはずだ。

また、最後のアルファベットの意味も不明である。
Aは、アメリカ土木学会のレール規格「ASCE」の頭文字Aを示す場合がある。
また、AやBが、同じくアメリカ土木学会規定のレール断面形状を示す場合もあり、
A(ARA-A)はレール高が高く、スマートな断面の旅客線用、
B(ARA-B)はレール高が低く、どっしりとした断面の貨物線用を示すが、
此処にはCがあり、それらが混在している事から、これも詳細不明である。

昭和初期頃までの古レールについては、明治から大正にかけての国内の鉄道開業が相次ぎ、
レールが慢性的に不足した為、大量のレールが複数国から輸入されている。
その為、多種多様で不明な点も多く、難しい分野になっている。
しかし、大変面白い分野でもあり、サンプルをもっと見て、調べてみたい所だ。

なお、レールの重さは、刻印が無くても、ジョイント部の継目板の形状で判る。
ジョイント部の内側が、L形継目板の4本ボルト固定で、ボルトの向きが揃っているのが、
30kgレールになります(下の画像例)。
国鉄ローカル線で使われた37kgと40kgレールの場合は、同じく4本ボルト固定だが、
ボルトの向きが正逆交互になり、且つ、L形継目板に犬釘を打つ切れ目が有るのが37kgレール、
I形継目板で犬釘の切れ目が無いのが40kgレールになる。
また、50kgレールは4本ボルト固定で、横∪字型の押え金具が付き(一部、無い場合もある)、
60kgレールのみ6本ボルト固定である。
(重量が重いレールほど、後年に作られたレールで、刻印はしっかりしている。)

IMGP7118_20120303200832.jpg
(画像拡大・加工済み。矢印がジョイント部の継目板。レール同士をボルトで連結する。)

後日談であるが、屋代線に使用されている古レールについて、撮影した資料用写真の中から、
古レールについての解説があるのを発見した。

それによると・・・屋代線開業時に導入されたレールは、
アメリカ製の60ポンド(30kg)輸入レールで、1920年(大正9年)製のコロラド社製と、
1921年(大正10年)製のテネシー社製との事だ。
なお、アメリカのレールメーカーとしては、カーネギースチールやベスレヘムスチールが有名だが、
当時のアメリカでは、中小の製鉄レールメーカーが乱立していたそうだ。

須坂駅3・4番線ホーム端にある鉄道オブジェコーナー「鐵道古典」に、
解説板と長野電鉄の最初の電車・モハ101の車輪と古レールのカットモデルがある。
手前にコロラド社製、反対側にテネシー製が展示されている。
このカットレールでは、メーカー名と年号等の刻印が確認出来る。

IMGP86371.jpg
(クリックすると、拡大。768*1,024pixel、304kbyte)

また、この松代駅ホームの見所のひとつとして、駅舎側3番線ホームの屋代方に、
大きな操作てこ小屋(操作てこ扱い所)跡がある。
ポイントや信号機を操作する為のもので、昔の鉄道では、電動ではなく、人力で動かしていた。
また、てこ数が多いので、昔あった貨物側線用もあるのだろう。

IMGP710411.jpg
(1・2番線ホームから。小屋の下は空洞で、線路側にワイヤーを出す切欠きがある。)

大きな操作てこは11本あり、錘に書かれた白字を見ると・・・
上り3本、下り2本の場内・通過・出発信号機用(※2)になっている。
現在は、須坂方が上り、屋代方が下りだが、かつての屋代は国鉄信越本線と線路が接続し、
屋代駅構内に0kmポストがある事から、当時は屋代方が上りだった。
なお、この操作てこが使われていた当時の信号機は、
現在使われている色灯式信号機(ランプ点灯式)ではなく、腕木式信号機である。

IMGP7133.jpg
(操作てこを前後に動かし、ポイントや信号機を遠隔操作した。)

木のプレートが括りつけられており、字が褪せているが、解読すると・・・
「松代駅 第二種桟械連動 集中 信号桟・転てつ器 て子◯(桟?)」と書かれている。
(※「桟」=「機」の省略漢字。転轍機「てんてつき」=ポイントの事。)



第二種機械連動(装置)とは、相互関係のある転轍機(ポイント)と信号機を、
転轍機付近に設置した装置で、機械的に同時に動かしたり、ロック(鎖錠)する仕組みの事である。
これは、人の操作ミスによるポイント破損、脱線事故を防ぐ保安装置で、
ポイントの開通方向と信号機の現示を完全一致させ、
複数あるポイント同士の誤った組み合わせを防ぐものだ。

操作てこの根本には、ワイヤーの端を固定する大きなドラムとその真下に空洞と切欠きがあり、
そこから線路脇にワイヤーを出す。
更に、そのワイヤーは線路脇に伸びて、転轍機や信号機に接続し、遠隔操作される。

なお、今の自動転轍機や色灯式信号機は、電気動力と電気信号でコントロールされているので、
これらの操作てこは使われていない。
小屋自体が、撤去される事も多いので、これだけ残っているのも貴重である。

IMGP7137.jpg

1・2番線ホームから、駅舎と3番線を眺めてみる。
駅舎本屋と操作てこ小屋の間には、屋根付きの大きなスペースがあり、
鉄道手小荷物の集積や荷捌きに使われていたかもしれない。
しかし、松代駅には、貨物ホームが残っていない。
もしかしたら、現在のスーパーマーケット付近にあったのかもしれない。

また、それを仮定すると、この駅が右側進行の特例駅であるのは、
屋代方からの貨車を駅舎側の貨物ホームへ引き込み、
東京方面と接続した屋代方に出す為かもしれない。想像が膨らむ所だ。

IMGP710611.jpg

改札口と待合室に向かおう。
この松代駅も、白漆喰の壁と、木目が浮き上がった柱部分の対比が美しい駅舎である。
改札は、鉄製ポールの簡易な柵になっている。
ホームは、元の客車ホームの高さの約76cmから、約30cmの嵩上げがされており、
改札口前に緩やかな傾斜がある。

IMGP7151.jpg

改札口近くの板書きの列車遅延案内や「定期券拝見」の木札がとてもレトロで、
駅の長い歴史を感じさせる。

IMGP8451.jpg
IMGP8463.jpg

改札口の直ぐ横に、出札口があり、木をふんだんに使った開業当時のものだ。
勿論、全て、硬券切符の発券であり、口座数(行先別種類)も多い。

IMGP7168_20120304135610.jpg

出札口の左隣は、元・鉄道手小荷物窓口(チッキ窓口)である。
この危険物禁止のホーロー看板も、昔は窓口周辺で良く見る事が出来た。
現在は、携行品一時預かり(一日300円)や、駅レンタサイクルの受付窓口になっている。

駅レンタサイクルは、冬季を除く、朝9時から夕方17時までの貸し出しが可能との事。
レンタル料金は無料で、傷害保険料100円の利用者負担のみで、貸りる事が出来る。

IMGP7166.jpg
IMGP7169.jpg

待合室の広さは、二十畳程と大きく、屋代線の他駅の木造駅舎よりも天井が高い。
北東側須坂方の窓沿いには、木造ロングベンチが幅一杯に据え付けられ、
手作りの座布団は地元の人が作ったのだろう。

採光部の窓や出入り口はあるが、少しばかり薄暗い雰囲気が、木造駅舎の落ち着く所だ。
松代は観光地なので、地図やパンフレット等も、沢山置いてある。

IMGP6624_20120304135611.jpg
IMGP6625_20120304135610.jpg
(二枚共に、同日早朝の撮影。)

改札口横の壁には、古い電光広告看板と使われなくなった列車案内表示器も・・・
これは幕式電動タイプの様だ。

IMGP7156.jpg



にほんブログ村 鉄道ブログ 鉄道旅行へ

グーグルマップの線路部分は、廃線の為に削除されています。
駅の所在地は正しいので、参考程度として下さい。

2016年1月13日再編集
2016年8月14日再編集(文体変更・文章追加・画像整理)

© hmd all rights reserved.
記事や画像の転載、複製、商用利用等は固くお断り致します。

category: 長野電鉄屋代線1日目 20話

thread: 鉄道の旅 - janre: 旅行

tb: --   cm: --