hmdの鐵たびブログ ローカル線の旅

のんびりローカル線の鉄道旅を、写真を中心に「見る紀行文」で長期連載しています。

【280】一富士、二煙突、三かぐや・・・岳南電車(10)比奈駅  




岳南富士岡駅から下車観光を兼ね、隣駅の比奈駅(ひな-)まで、歩き鉄でやって来た。
時刻は13時過ぎ。昼食を摂り、湧水公園、竹採公園や古刹を観ながら、二時間位歩いて来た感じだ。

比奈駅の周辺は、大きな製紙工場とその社員寮ビルが建ち並び、
隣接する工場から大きな音はするが、日中でも人気が無く、静かな感じである。
なお、一般住宅は、北にある根方街道(ねかた-)沿いから、北側の高台に集まっている。

砂利敷の駅前は広く、大きな駅前ビルもあるが、タクシーの営業所以外は、営業しているかは怪しい。
かつて、工場従業員が通ったらしい昭和風の飲み屋、酒屋、喫茶店や食堂の看板だけを残して、
寂しげに並んでおり、三階建てのビルの上階には、事務所等が入っていたのだろう。

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(地元タクシーのトンボ交通の営業所が入っている。電光式看板も大分色褪せている。)

この比奈駅は、昭和26年(1951年)12月開延伸時開業、起点の吉原駅から5.4km地点、
所要時間約13分、所在地は富士市比奈にあり、海抜は3.6mになっている。
駅名は、前出のかぐや姫由縁の旧字「姫名郷(ひな-)」が由来であり、ロマンチックな駅名だ。

駅舎は、北に面した切妻平屋建ての大型木造モルタル建築で、
平成24年(2012年)3月の貨物取り扱い廃止と共に、無人駅になっている。
この赤いトタン屋根は、岳南線の木造駅舎の標準色の様だ。

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(傷みが激しく、継ぎ接ぎでトタン壁の補修がされている。)
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(駅出入り口は、軒が低くて、間口がとても広い。)
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(ホーム側から。後ろの大きな白いビルは、日本製紙の社員寮ビルである。)

南江尾寄りにある待合室内に入ってみよう。
待合室の壁には、広告入り木製椅子がふたつ並び、腰巻きの青の小タイルが昭和風を感じさせ、
この駅も開放的なコンクリート土間造りで、出入り口の間口はとても広い。
出札口はそのまま残っており、鉄道手小荷物窓口(チッキ)も、ほぼ原形のままだ。
戦後のモータリゼーション前は、沢山の工場勤務の人達が利用した光景が浮かぶ。

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(広告は塗り替えられており、赤字で、衣料百貨のいさみや、黒字で、◯田呉服店と読める。)

有人駅時代は、勿論、硬券切符の取り扱いをしており、今では珍しい相矢式(※)の片道乗車券や
補充片道乗車券でのJR線連絡切符も発券されていた。
また、東京山手線内着の硬券の新幹線経由片道連絡切符も、取り扱っていたそうだ。
硬券切符で新幹線に乗るのは、今ではかなり珍しい乗車方法だが、
起点の岳南吉原駅は今も発券しているので、時代錯誤風に利用するのも面白い。
なお、規則により、在来線のみの利用も可能だ(新幹線利用時は、三島経由で別途特急券等が必要)。

無人化後は、駅前の白い建物から移転した鉄道模型店が、駅舎内にテナントで入っており、
午後以降に開店しているらしい。
本物の営業中の駅舎に、鉄道模型店がテナントで入っているのも、全国でもここだけだろう。
店内には、12畳ある元宿直室を利用した大型貸しレイアウト(有料)もあり、
岳南電車のイベント時にも、模型展示やグッズ販売等で協賛参加するらしい。
また、比奈駅や本吉原駅ホームのペーパークラフトストラクチャーも販売しており、
この特徴的なきのこ型旅客上屋を精密に再現している。
フジドリームスタジオ501公式HP

ホームまでは、構内踏切で接続しており、楕円の鉄パイプで造られた改札がある。
改札横には竹灯籠が展示され、切り抜き絵と文字でかぐや姫を表している。
構内踏切の柵としても、竹灯籠を寝かしてあり、照明を入れると模様が浮き上がる風流なもので、
これらは、平成27年(2015年)夏のイベント時に制作されたそうだ。

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この比奈駅では、駅西側にある、日本製紙富士工場の貨車の取り扱いをしていたので、
岳南線の駅の中でも、最も広い構内になっている。
工場は岳南線を挟んで、吉原方の北側と南側にそれぞれある為、別々に構内に接続している。
当時、古典的凸型電気機関車のED501が常駐し、吊り掛け音を唸らせながら、
貨車の突放も行っており、貨物駅としての役割が大きかったそうだ。

なお、構内の貨物側線は、北側に合計三線(うち一線は、引き込み線共用)あるが、
吉原方は本線と接続していないので、岳南富士岡方の興和工業南の貨物ヤードと対で使われていた。
興和工業南の貨物ヤードは、吉原方と接続する出発線があるので、
比奈駅で貨車を組成後、貨物ヤードに引き上げし、吉原方に本務機を連結後に発車した。

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(比奈駅全景。駅舎横には広大な敷地があり、現在は、有料駐車場兼保線資材置き場になっている。)

構内踏切を渡って、ホームに行ってみると、八本柱の中規模のきのこ型旅客上屋がある。
最盛期は、三両編成の電車が運行されたので、ホーム長はもう少し長い。
なお、駅の南側は、荒れ地が広がっていて、少し離れた所に中堅製紙メーカー丸富製紙等の
再生紙工場が集まっている。

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(旅客上屋。13時04分発の上り吉原行き7000系(7003)が、到着。再取材時撮影。)
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(ホームには、吊り下げ式の古い国鉄風駅名標と、建て植え式の新しい観光駅名標がある。)

岳南江尾方を望むと、ふたつの踏切が連続してあり、直線先の貨物ヤードが少し見える。
かつては、機回し線や興和工業への引き込み線もあったそうだが、撤去された。
ヤードの近くに行ってみると・・・
最南側の本線とその横の出発線は、平坦ではなく、岳南江尾方に上がる緩やかな勾配があり、
貨車の流転防止の為か、奥に並ぶ三本の貨物留置線は、緩やかなすり鉢状になっている。

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(構内踏切横から、岳南江尾方を望む。白い大煙突は、再生紙メーカーの興和工業のもの。)
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(興和工業南の貨物ヤード東側の荒川踏切横より、再取材時に低倍率撮影。)

吉原方ホームには、瓢箪形の枯れた小さな池庭があり、
線路は右に緩やかにカーブをしながら、日本製紙の工場の中に入って行く。
北側工場側の引き込み線は、途中分岐して二線あるが、一部レールが取り外されている。
南側工場側は、ホーム前上り副本線から分岐した一線であるが、
工場内で三線に分岐しているらしい。

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(左から、南工場引き込み線、上り副本線、下り本線、北工場引き込み線、構内側線二本である。)

構内が広く、遮るものが無いこの駅も、夜景撮影に適している。
南側に建物が隣接せず、光が壁に反射しないのも良い所だ。
きのこ型旅客上屋の白い梁が美しく映え、興和工業の白い煙突も良いアクセントになっている。

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(再塗装後の再取材時に撮影。ストロボ無し、手持ち撮影。)



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(※相矢式)
乗車駅名を切符の中央に置き、同運賃の上り下り方面駅名を左右に配し、矢印で示した切符。
鉄道ファンの間では、「矢片」(片は片道乗車券の意味)とも言う。

【参考資料】
アイラブ岳鉄(鈴木達也著・静岡新聞社刊・2001年)

2016年12月22日再編集(画像差し替え・校正)

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