hmdの鐵たびブログ ローカル線の旅

のんびりローカル線の鉄道旅を、写真を中心に「見る紀行文」で長期連載しています。

【238】あかがねの鉄路を追って・・・わたらせ渓谷鉄道(46)通洞駅下車観光[その1]足尾銅山観光  


築100年の時を刻んだ、洋風建築の通洞駅(つうどう-)から、町中の観光に出かけよう。
通洞エリアは、足尾町の中心地として、役場の支所、公共施設、学校、旧鉱山施設、
商店街や観光施設も集まり、大型バスでの団体観光客訪問も多くなっている。

なお、駅周辺の本来の字(あざな/地区名)は、松原になる。
江戸時代までは、人家は少なく、村の農地が広がっていたとの事。
足尾銅山の再開発が始まった明治頃までは、間藤駅北の精錬所周辺が本坑口にも近く、
最も栄えていたが、明治40年(1907年)に賃金・待遇に不満を持つ坑夫達による大暴動が起き、
精錬所周辺の鉱山街は壊滅的な被害を受けた。
その後、備前楯山(びぜんたてやま)の南東端部である、この通洞に鉱山事業の中心地を移転し、
三大主要坑道の通洞坑もある事から大変栄え、今に至るそうだ。



駅の急なコンクリート石段下には、オブジェのある小さなロータリーがあり、
緩い坂を下ると、直ぐにT字の交差点がある。
車がすれ違い出来る位の細い旧国道であるが、小さな商店街も連なっている。
交差点の白い建物は、足尾町の分庁舎兼観光案内センターだ。


(駅前ロータリー。)

時刻は14時を過ぎた所である。
間藤駅から、ずっと歩いて来たので、空腹になって来た。
交差点を右折した先に町食堂があるので、昼食を取ろう。
わたらせ渓谷鐵道訪問時には、いつもお邪魔している、若竹食堂【食事マーカー】である。

昭和の面影がそのまま残る古い町食堂で、気兼ね無く、安く食べられるので、
地元住民や個人観光客の利用が多い。
早速、名物の醤油ラーメン(500円)を注文・・・暫くすると、出て来た。
年配の女将曰く、鉱山時代からの味と盛り付けを守っているとの事。
甘いスープの懐かしい昭和の醤油ラーメンは、最近の塩辛いラーメンと比べて、とても新鮮に感じる。


(町食堂の若竹食堂。)

(名物の醤油ラーメン。税込500円。)



40分程の食事と休憩後に、御礼と食事代を払って出発しよう。
先ずは、この足尾町最大の観光施設である、足尾銅山観光【緑色マーカー】に向かう。
若竹食堂先の信号機付交差点を左折すると、大きな駐車場と正門が見える。

この通洞にあった通洞坑は、閉山後は荒れるがままであったが、
日光市が観光整備を行ない、本物の坑道を使った体験型の鉱山見学施設になっている。
観光バスの団体観光は、この足尾銅山観光見学が定番コースとして、良く組み込まれている。



(足尾銅山観光出入口。)

坂の下のログハウス風の建物で、入坑券(大人800円)を購入し、パンフレットも貰う。
この建物は駅になっており、本物のトロッコ(人車・じんしゃ/鉱山用語)に乗って、
通洞坑にそのまま入る事が出来る。
操業当時の車両ではないが、急坂区間がラック式軌道なので、鉄道好きには興味津々だ。

小型の蓄電池式電気機関車に牽引され、その後に、全長4m程度の客車が三両連っている。
各車両は小型連結器で繋がれており、最後尾車両には、昔ながらの荷台デッキもある。

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(サーボ・ロコと言う、工事用の蓄電池式電気機関車である。)

遊園地の遊具みたいなので、大人が乗り込むには恥ずかしい感じもするが、
遊具ではなく、本物の工事用トロッコが、一般観光客向けに運行されているのは珍しい。

機関車と客車のメーカーは、特殊搬送車両メーカーのトモエ電機工業(現・新トモエ電機工業)である。
トンネル掘削工事等では、資材や人員の輸送用の軽便鉄道を敷設する事があり、
その輸送用車両として使われているそうだ。
なお、鉄道営業法に定められた鉄道車両ではなく、あくまでも輸送用機械になり、
国内では唯一のメーカーとの事。

駅から下る急坂区間のラック式軌道は、リッケンバッハ式と言われるタイプである。
信越本線の碓氷峠(うすい-/横川-軽井沢間)や大井川鐵道井川線(-いかわせん)で採用された、
位相をずらした三枚の平行金属板(ラックレール)を使うアプト式と違い、
箱状のラックレール内にピンを梯子状に並べてある。
車両下部にあるラック(歯車)を噛ますのは、アプト式と同じだ。
なお、軌間(レールの幅)は狭軌に見えるが、やや狭い941mmになっている。


(リッケンバッハ式のラック式軌道。)

中年の男性職員が、蓄電池式電気機関車の小さな運転席に乗り込み、
短いブザーと案内放送が入ると、いよいよ発車になる。
ホームの直ぐ先の急勾配区間は、ラックをガリガリ噛みながら慎重に下り、
坂下の小さな交換設備で、先頭の蓄電池式電気機関車を切り離す。
側線に機回し後、運転手が客車先頭の運転席に乗り込む。
この機関車は急勾配区間用で、この客車も、運転台付の蓄電池式電車になっている。

ここからは、電車のみで発車し、通洞坑に勢い良く突入する。
如何にも、機械と言う無骨な音や連結器同士の衝突がガタガタと伝わり、
乗り心地は悪いが、とてもスリリングだ。

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(ラック式区間を慎重に下る。)

坑道内への線路は300m程で行き止まりとなり、電車は停車。
終端部の右側に小さなホームがあり、ここからは徒歩での見学になる。
湿度は非常に高く、ビショビショで、天井からは雫が落ちる。

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(坑道内の到着ホーム。天井は非常に低く、160cm程度しかない。)

線路の先は鉄柵で閉鎖されており、暗闇と風の音がヒュオーと聞こえて、とても不気味である。
足尾銅山の坑道全長は1,234kmもあり、その内の700mを歩いて、見学出来るそうだ。
短く感じるが、国内には幾つかの本物の坑道を使った見学施設でも、国内最大規模との事。

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(線路先の坑道閉鎖部。まるで、奈落に落ちる様な不気味さを感じる。)

岩肌剥き出しの当時の坑道が見学用に整備され、
銅鉱石を採掘している様子が、等身大のリアルな人形で再現されている。
江戸時代、明治時代・・・と、時代が下がる毎に展示されており、
各所にボタンスタート式の照明・音声解説装置もあって、とても判り易い。
坑道出口付近には、足尾銅山の歴史紹介コーナー、各種鉱石の資料展示室、グッズ販売所がある。

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(江戸時代の手堀鉱夫。ボタンを押すと、電動で動く仕掛けもあり、とてもリアルだ。)
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(江戸時代の車を押す坑夫。実は、この足尾銅山観光で、一番の有名人である。)
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(昭和時代の休憩所の様子。過酷な仕事のささやかな安堵の時だったのだろう。)

出口を出ると・・・そのまま、通洞坑【水色マーカー】前の広場に出る。
江戸時代の銅製錬の様子のマネキン展示や、実際に坑内で使われていた、
電気機関車等も静態保存されている。

この通洞坑は、古河市兵衛氏が銅山再開発の為、明治18年(1885年)から掘削したものだ。
明治29年(1896年)に、本山精錬所近くにある本坑と連結し、
以降、足尾銅山の主要坑道としての役割を担っていた。
また、明治から昭和にかけての我が国の発展に大きな役割を果たした事から、
国の指定史跡にも指定されている。
なお、「通洞」は地名ではなく、主要な坑道に名付けられる、一般的な名称との事。

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(通洞坑。横には、山の神の小さな鳥居が、祀られている。)

◆国指定史跡リスト◆
「足尾銅山通洞坑(つうどうこう)」
所在地栃木県日光市足尾町通洞9−2
登録日平成20年3月
年代明治29年(1896年)竣工
構造形式鉱山坑道
特記坑道内の一部見学可能。
(文化庁文化遺産データベースを参照・編集。)

意外に知られていないが、国内初の電気式鉄道を敷設したのは、この足尾銅山である。
坑道で使われていた電気機関車等の車両も、静態保存されており、
幌屋根付車両は鉱夫を乗せる人車、その後ろは、1t積み鉱石専用貨車である。
この電気機関車1機で、貨車25両まで牽引出来たそうだ。
坑道が狭い為、機関車の車高が大変低いのと、大きな集電ポールが特徴になっている。

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(足尾A型電気機関車と人車、鉱石運搬車。)

そろそろ、出口に向かおう。
出口にあるビル内には、土産店街があり、昭和の雰囲気そのまま残っている。
銅の鍋や洗面器、鉱石の置物やアクセサリーを販売しているのが、足尾銅山らしい。


(土産店街。昭和の雰囲気が好きな人は、堪らないだろう。)

ここまでの見学時間は、1時間程度になる。
足尾銅山の歴史や坑内の様子が易しく良く判り、地底探検の感じがして、とても面白い。



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足尾銅山観光の取材は、平成24年(2012年)春の追加取材時になります。
トロッコ車両や通洞坑の写真公開は、日光市足尾銅山観光管理事務所より、
個人プライバシーの保護を条件に、許可を受けております。

日光市足尾銅山観光管理事務所広報担当Wさま、公開許可を頂きまして、厚くお礼申し上げます。

2015年12月5日再編集
2016年12月15日再編集(文体変更・文章追加・画像整理)
2017年4月29日文章加筆・校正

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category: わたらせ渓谷鐵道2日目 15話

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