hmdの鐵たびブログ ローカル線の旅

のんびりローカル線の鉄道旅を、写真を中心に「見る紀行文」で長期連載しています。

【202】あかがねの鉄路を追って・・・わたらせ渓谷鐡道(10)神戸駅下車観光[その1]旧線遊歩道  


この神戸駅から、渡良瀬川上流約1.5kmの地点に、草木ダム(くさき-)と言う巨大ダムがある。
そのダムの建設で、国鉄足尾線の線路が水没する事になった為、
神戸駅から下り間藤方面の隣駅・沢入駅(そうり-)までは、
線路の付け替えした新線区間になっている。
今でも、旧線の一部が残っているそうなので、行ってみよう。



その前に、間藤方の引き込み線に寄ってみよう。
波形スレート屋根の大きな車庫に、保線用の大型車両が留置されている。
古い写真を調べると、足尾方面の元・貨物ホームだったらしいが、
上り桐生方でなく、下り足尾方向に設置されているのも珍しい。


(間藤方の引き込み線は、保線車両の車庫として、使われている。)

(軌道モーターカーと資材運搬用トロッコ。※追加取材時の午後に撮影。)

駅前にある急坂を登ると・・・上を通る県道から、駅舎が眼下に一望できる。
ここから見ると、駅は渡良瀬川の川床の低地にあり、高低差は20m以上もありそうだ。
国土地理院国土電子web(わたらせ渓谷鐡道神戸駅・1/25,000)


(神戸駅と駅真広場。※追加取材時の午後に撮影。)

急坂を上がると、線路側に下がる脇道が横にあり、
その先に第1種踏切の座間街道踏切【線路マーカー】がある。
ここ付近の花木の隙間から見える駅の光景も、なかなか良い感じで、定番撮影地になっている。
マピオン電子地図(わたらせ渓谷鐡道神戸駅付近座間街道踏切・1/3,000)


(踏切に降りる小道の座間街道。)

(花桃の枝の隙間に、引込み線の手動式ポイントが・・・。)

(坂の途中から神戸駅を望む。左の切れている線路は、元・3番線。)

この座間街道は、地域の中心である桐生と、この元・東村(現在は、みどり市東町)を
結ぶ最短距離の旧街道で、鉄道や国道の整備される以前は、重要な生活道だったそうだ。
途中、座間峠(標高約950m)を経由する事が、街道名の由来になっている。

また、足尾鐡道の敷設案では、この座間街道と座間峠、または、大茂峠(だいもん-)を経由して、
三境山・残馬山系の尾根を越え、梅田集落(現・桐生市梅田町)を経由し、
桐生川に沿って、北側から桐生に入る計画があったらしい。
距離も約20kmで、桐生までの最短ルートであったが、経由地の梅田集落では鉄道建設反対となり、
疫病もたらすなどの風評や養蚕桑への煙害、山火事を心配する声が上がった為、
この最短ルート案は計画中止になったそうだ。

結局、敷設し易い大間々(おおまま)経由の渡良瀬川沿いに線路が敷設され、
国道122号線も並行して整備されたので、この最短ルートも廃れてしまっている。
現在の県道343号線が、座間街道の一部をなぞっているが、峠付近は車が通れない山道らしい。



上の地図の青ラインが座間峠ルート、黄色ラインが大茂峠ルート、
赤ラインが現在のわたらせ渓谷鐵道(旧足尾線)のルートになる。(共にイメージ図)。
なお、大茂峠ルートが有力だったらしい。梅田集落は、両ルートの合流地点(星印)にある。
上記の座間峠ルートと大茂峠ルートは、桐生天満宮付近に駅を設置する計画だったそうだ。

また、大間々(おおまま)から桐生間のルートも、複数検討されていた。
大間々から桐生には向かわず、両毛線の岩宿へ結ぶ案(緑ライン)や、
大間々から東進して、高津戸と川内を経由して、桐生に達する案(灰ライン)も検討されている。



座間街道踏切から戻り、広い道を少し歩いて行くと・・・
線路をオーバーパスするコンクリート製陸橋である万年橋【黄色マーカー】を渡る。
橋の上から間藤方を見ると、狭くなっていく川谷の線路端に、ずらりと花桃が並んでいる。
マピオン電子地図(わたらせ渓谷鐡道神戸駅付近万年橋・1/3,000)


(万年橋から、間藤方。)

万年橋から降り、この線路際の花桃並木【カメラマーカー】に沿って、のんびりと歩いて行こう。
人家は点在するが、人気は無い。車も通らず、風の音だけが通り過ぎて行く。
途中に、湧き水が勢い良く流れる場所があり、水音で清々しい気持ちになる。
金属ボールも置いてあり、隠れた地元の名水かもしれない。
また、線路横断禁止の注意書きの木製看板も味がある。


(線路際の花桃並木。幹も細めなので、若木が多い様だ。)

(線路際の湧き水。)

花桃に寄り添っていた線路は、軽く左カーブをして、道路から離れてしまう。
そして、新線として開通した、草木トンネルに吸い込まれて行く。
草木トンネルの手前には、線路の右側にスペースがあり、ここが旧線の分岐地点らしい。

その先の道路脇には、藪の中の錆びついた小さな鉄橋跡があり、
道路より一段高い場所に旧線道床があった事が判る。


(旧線の小さな鉄橋。)

もう少し歩くと、道路は右に急カーブし、渡良瀬川を渡る。
そのアウトサイド側の山腹に・・・旧線のトンネル【トンネルマーカー】が聳えている。

この旧国鉄足尾線琴平トンネル(ことひら-)は、足尾鐡道開通時に掘削されたトンネルで、
今から100年前の大正元年(1912年)竣工のものだ。
現在は、草木ダム周辺の遊歩道として整備されており、観光案内板も設置されている。
なお、ここまでで、神戸駅から約1km・徒歩15分程になる。
国土地理院国土電子web(旧国鉄足尾線琴平トンネル・1/25,000)


(旧国鉄足尾線琴平トンネル。)

(トンネル前の観光案内看板。)

なお、この旧線が廃線になったのは、草木ダムが完成する約4年前の昭和48年(1973年)になり、
既に、廃線から約40年が経過している。
垂直の岩壁に開けられたトンネルは、ポータルはイギリス積み煉瓦造り、内部の下部は石積み、
上部は煉瓦巻きの馬蹄型で、蒸気機関車の黒煤跡が、雨水に伸ばされて、薄っすらと残っている。

IMGP2289.jpg
(旧国鉄足尾線琴平トンネル桐生方ポータル。)

そのまま、トンネル内に入ってみよう。
然程、長くはなく、50m程度であるが、照明は無いので薄暗く、ひんやりとした空気を感じる。
トンネルを抜けると、古レールを柱に使った大きなロックシェッド(落石覆い)がある。
レール柱の使用本数も多く、幾何学的な美しさは、見応えがある。

なお、古レールの刻印を探したが、確認できなかった。
このロックシェッドは、昭和一桁の国鉄時代初期に造られたと言われている。
擁壁も垂直に近い絶壁であり、まるで、レールのトンネルの様だ。
今にも、神戸駅を発車した下り列車が、やって来そうな感じがする。

IMGP2296.jpg
(間藤方から、ロックシェッドと琴平トンネル間藤方ポータル。)

(両側の支持部分は、溶接と補強がされて、上部のコンクリート製土砂避けを支える。)

緩い登り坂の遊歩道をそのまま歩いて行くと、大型の掛樋(かけひ)も残っている。
雨水や土砂が線路内に流れ込まない様にする為、上部の樋で誘導して、川にそのまま落とすものだ。
なお、鉄道用掛樋を間近で観察出来るのは、全国的にも珍しい。
列車の車窓から見る以上に大きく見え、柱は古レール、樋は金属製になっている。


(旧線鉄道用掛樋。間藤方から撮影。)

山側の擁壁は、玉石積みと言って、コンクリートに丸い石を埋め込んである。
コンクリートが高価だった頃、資材節約や補強の為に良く見られる工法だが、
最近では、滅多に見られなくなっている。
石の大きさも20〜30cmと綺麗に揃えてあり、独特な景観がレトロだ。

なお、この旧線遊歩道は、緩い登り坂が続く穏やかな道であるが、
右手の渡良瀬川は、切り立った崖の深いV字谷の難所になっている。



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【参考資料】
 現地観光案内板
「視点オピニオン21・わたらせ渓谷鐵道」(上毛新聞公式HP・2005年2月4日記事)

2016年1月13日再編集
2016年12月8日再編集(文体変更・文章追加・画像整理)

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category: わたらせ渓谷鐵道1日目 29話

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