hmdの鐵たびブログ ローカル線の旅

のんびりローカル線の鉄道旅を、写真を中心に「見る紀行文」で長期連載しています。

【197】あかがねの鉄路を追って・・・わたらせ渓谷鐵道(5)車窓風景編 本宿駅から花輪駅へ。  


桐生駅から約30分で、本宿駅(もとじゅく-)に到着する。
何て事の無い、単式ホームに簡易な旅客上屋のみの小さな駅であるが、
わたらせ渓谷鐵道の旅を楽しむ上で、この駅から本格的に渡良瀬川の渓谷美が始まるので、
大きなターニングポイントの駅になっている。
マピオン電子地図(わたらせ渓谷鐵道本宿駅・1/21,000)


(12kmポストと上り勾配の途中にある本宿駅。キロポストは、下新田駅からの距離。
   ※上り桐生行き列車の最後尾から、間藤方を撮影。)

(本宿駅。※上り桐生行き列車の最後尾から、間藤方を撮影。)

この駅は、国鉄からJR東日本に転換された平成元年(1989年)3月に、
地元請願により設置された小さな無人駅だ。
起点の桐生駅から6駅目、13.8km地点、桐生市黒保根宿廻(くろほねやどまわり)、
標高214mにあり、10パーミルの勾配の途中にある。
駅の近くには、幾つかの民家や山の上に団地があり、
坂上田村麻呂(さかのうえたむらまろ)由来と言われ、1,000年以上の歴史のある、
秘湯の一軒宿・梨木温泉(なしきおんせん)がある。
梨木館公式HP

本宿駅に約1分間停車。木立の間から、川面が間近に見える。
駅は国道下の斜面にあり、長い階段で出入りする様だ。
ここは、赤城山の南東山麓にあたり、次の駅の水沼駅までの3.1km区間は、
古路瀬渓谷(こじせけいこく)の切り立った崖が続く。
秋には、わたらせ渓谷鐵道沿線でも、指折りの紅葉名所となっている。


(本宿駅付近の渡良瀬川。※上り桐生行き列車最後尾から、間藤方を撮影。)

なお、「古路瀬」とは、珍しい地名であるが、本来の読み方は「ころせ」であり、
渡良瀬川の旧河川名「黒川(くろかわ)」が転じたと言われている。
しかし、音読の意味合いが悪い為、「こじせ」に読み替えられたそうだ。





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【停車駅】】【→トンネル、〓→主な鉄橋、◎→列車交換可能駅
本宿0712==〓】【===〓===〓=0719水沼◎
下り711D列車・間藤行き(わ89-315「わたらせIII号」単行)
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本宿駅を定刻に発車。1分程上り勾配を走ると・・・
城下橋梁(しろおり-)を渡り、城下トンネル(しろおり-)に入る。

城下橋梁は、渡良瀬川支流が合流する地点に架かる鉄道橋で、川床からは高さ7mある。
この橋の上方に、旧道の旧城下橋、その上に現在の国道122号線の城下橋があり、
ひな壇状に三段並んでいるのが面白い。
マピオン電子地図(わたらせ渓谷鐵道城下橋梁・1/8,000)


(城下橋梁と城下トンネル。※上り桐生行き列車の最後尾から、間藤方を撮影。)

鉄橋の直ぐ先は、城下トンネルとなっており、そのまま突入する。
開業当時のままの煉瓦積み馬蹄型断面トンネルで、全長は直線82mある。

◆国登録有形文化財リスト◆
「わたらせ渓谷鐵道城下橋梁・城下トンネル(しろおり-)」
所在地群馬県桐生市黒保根町宿廻
登録日平成21年(2009年)11月2日
登録番号[橋梁]10-0295 [トンネル]10-0294
年代共に、大正元年(1912年)。
構造形式[橋梁]鋼製単桁橋(デッキガーター橋)、橋長20m、橋台付。
[トンネル]煉瓦造及び石造、長さ82m、擁壁付。
特記[橋梁]
渡良瀬川支流の川口川に架かる。単線仕様の鋼製デッキガーター橋。
桁はスティフナーをJ形とし、長さは60フィートある。
主桁を連結するロ字形のブラケットは、
筋違補強を入れずに当初の姿のまま残る。
[トンネル]
延長82m、単線仕様の直線状の隧道。坑口は煉瓦4枚厚の馬蹄形とし、
南坑門をほぼフランス積風の布積で築く。
官鉄によるわが国初のトンネル規格である、
「鉄作乙第4375号型」とほぼ同じ断面である。
(文化庁公式ページの国指定文化財等データベースを参照・編集。)

城下トンネルを抜けると、川縁の急崖の上を時速40〜50kmで、
豪快なエンジン音と共に、グイグイと登って行く。
この区間も人家の少ない山中で、小さなアップダウンが多く、頻繁に勾配率が変わる。
なお、川崖に木々が沢山生い茂っている関係で、夏になると川面が見えなくなる。
春先の緑は少ないが、川の流れを見たいのであれば、晩秋から初春がお勧めの時期だ。
(全て、上り桐生行き列車の最後尾から、間藤方を撮影。)

川に迫った山と大きな岩の間を走るのも、この路線の見所のひとつである。
ダイナマイトや削岩機で削ったままの、コンクリートで仕上げていない所がワイルドで、
その風合いの変化が楽しい。また、大きな落石防止ネットを被せてある場所も多い。



線路際の木造保線小屋には、可愛らしい動物が描かれたブリキの歓迎看板が・・・。
次の水沼駅の温泉のものらしい。

IMGP3554_20120603162216.jpg

なお、独立した大きな落石防護柵は、わたらせ渓谷鐵道には、意外と少ない。
この防護柵には、古レールが使われているそうだが、場所が場所だけに、年代は不明だ。



また、本宿駅から約3分半で、渡良瀬川支流の一級河川・江戸川を渡る。
この江戸川橋梁は、I型の鉄骨の上にレールを固定した簡易な造りになっている。
明治・大正期の標準設計のIビームとしては、最大級規模になるそうだ。

◆国登録有形文化財リスト◆
「わたらせ渓谷鐵道江戸川橋梁(えどがわきょうりょう)」
所在地群馬県桐生市黒保根町下田沢
登録日平成21年(2009年)11月2日
登録番号10-0293
年代大正元年(1912年)
構造形式鋼製単桁橋(Ⅰビーム橋)、橋長5.6m、橋台付。
特記渡良瀬川支流の江戸川に架かる橋長5.6mの鋼製単桁橋。
桁はDORMANLONG社製の鋼材を用いた「達第875号型」のⅠビーム。
明治・大正期の標準設計Ⅰビームとしては、最大級規模を誇る。
(文化庁公式ページの国指定文化財等データベースを参照・編集。)



古レール製の大きな落石防止柵を通過すると、左手に棚田が見えてくるので、
町に近づいているのが判る。
その先の、トンネルの様な長い岩の切り通しを抜けると・・・
右手の視界が大きく開けて、川谷が広くなり、明るい雰囲気になる。


(水沼駅手前の岩の切り通し部。※上り桐生行き列車の最後尾から、間藤方を撮影。)

右に大カーブをしながら、国登録有形文化財の不動沢橋梁を越えると、水沼駅に到着する。
ここでも、線路際の大きな桜並木が、列車を迎えてくれる。

IMGP3547.jpg
(水沼駅手前の桜並木。※上り桐生行き列車の最後尾から、間藤方を撮影。)
IMGP3545.jpg
(不動沢橋梁と水沼駅。※上り桐生行き列車の最後尾から、間藤方を撮影。)

この駅は、相対式二面二線で列車交換が出来る為、数分間停車する事もある。
大正元年(1912年)9月開業、起点の桐生駅から7駅目、16.9km地点、所要時間約35分、
所在地は桐生市黒保根町水沼(くろほねまちみずぬま)になる。
なお、標高は258mあり、大間々駅から約75m上がってきている。

◆国登録有形文化財リスト◆
「わたらせ渓谷鐵道不動沢橋梁(ふどうざわきょうりょう)」
所在地群馬県桐生市黒保根町水沼
登録日平成21年(2009年)11月2日
登録番号10-0292
年代大正元年(1912年)
構造形式鋼製2連桁橋、橋長16m、橋台及び橋脚付。
特記不動沢に架かる橋長16mの鋼製2連桁橋。
桁は「達第1084号型」のデッキガーダーと、
DORMANLONG社製鋼材による「達第875号型」のⅠビームよりなる。
橋台と橋脚一部に、フランス積風の布積を残す。
(文化庁公式ページの国指定文化財等データベースを参照・編集。)

上り列車と列車交換の為、水沼駅で6分間停車するそうだ。
この駅から、30人近い中学生達が乗車してきて、車内は大変賑やかになり、
朝のローカル線のラッシュアワーとなる。

また、この駅は、温泉施設がある「温泉駅」として有名だ。
以前は、わたらせ渓谷鐵道が直接経営していたが、休館となってしまった。
一時は廃業が心配されたが、民間企業に委託をして、営業を再開している。
水沼駅温泉センター公式HP

なお、駅の真下に源泉があるのではなく、町内の猿川温泉から引湯しているとの事。
露天風呂やサウナもあり、この駅まで乗車して、温泉を利用する年配客も多い。
日帰り入浴のみで、料金は大人600円、わ鐵のフリーきっぷを提示すると、2割引きになる。
旅や鉄道撮影行脚の帰りに、ひとっ風呂も良いだろう。



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【停車駅】〓→主な鉄橋 ◎→列車交換可能駅
水沼◎0725===〓===0731花輪
下り711D列車・間藤行き(わ89-315「わたらせIII号」単行)
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暫く、車内で待っていると、上り712D桐生行きの2両編成である、
わ89-302「わたらせ号」+わ89-311「たかつど号」と列車交換をする。
上り列車も学生達で大混雑しているが、殆どが、高校生達の様だ。
この下り列車は、大勢の中学生達と数人の大人を乗せて、入れ違いに発車する。

IMGP3216.jpg
(水沼駅を発車する。左側の建物が温泉センター。※最後尾から、桐生方を撮影。)

水沼駅を発車すると、線路の東側は広い公園になっており、
運動場やテニスコート等も整備されている。
また、渡良瀬川の両岸が少し開けて、明るい感じになってくる。
線路のカーブも、本宿〜水沼間よりは、大分緩やかだ。

緩やかになった上り勾配を走って行くと、小さなダムが・・・
堤の高さが非常に低いので、ダムではなく、取水堰の様だ。
国土地理院の地図を確認すると、大間々駅近くにある、高津戸ダムに送水されている様である。


(水沼〜花輪間の取水堰。※上り桐生行き列車の最後尾から、間藤方を撮影。)

なお、渡良瀬川は昭和23年(1947年)9月中旬に、
大型台風のカスリーン台風が関東南海上を通過した際、
赤城山や足尾の山々から大土石流が発生して、渡良瀬川を流下し、
下流の桐生や足利に未曾有の大災害をもたらした。
これを契機に、渡良瀬川本流やその支流に多数のダムや堰が建設され、
治水・土石流災害防止対策が進んだ経緯があるそうだ。

水沼駅から約3分で、小黒川橋梁を渡る。
全長54mのデッキガーター鉄橋の橋台は、水の抵抗を減らす為、
レトロな木の葉型石積みになっているそうだ。


(小黒川橋梁。※列車最後尾から、桐生方を撮影。)

◆国登録有形文化財リスト◆
「わたらせ渓谷鐵道小黒川橋梁(おぐろがわきょうりょう)」
所在地群馬県みどり市東町荻原・桐生市黒保根町水沼野尻
登録日平成21年(2009年)11月2日
登録番号10-0290
年代大正元年(1912年)
構造形式鋼製3連桁橋、橋長54m、橋台及び橋脚付。
特記小黒川が渡良瀬川に合流する地点に架かる。
桁長、桁高の異なる70フィート、60フィート、30フィートの
デッキガーダーからなる橋長54mの鋼製3連橋梁。
中洲に建つ橋脚の間隔に対応して、各桁長に変化をつける独特の造り。
(文化庁公式ページの国指定文化財等データベースを参照・編集。)

小黒川橋梁を高速で渡ると、渡良瀬川が良く見えるビュースポットを通過する。
わたらせ渓谷鐵道は川線であるが、山が川岸まで迫っている場所が多く、
車窓から開けて見える場所は、意外と少ない感じだ。


(水沼〜花輪間の小黒川橋梁付近。※当列車の側窓から、上流を撮影。)

そして、大きく山側に寄って、渡良瀬川から一度離れる。
旧国道と踏切でクロスし、国道バイパス下の民家が点在する、緩やかな勾配を上って行く。
この付近は、民家の裏手に線路が敷かれている感じなので、
住民用の車が通れない第四種踏切が幾つかあり、タイフォンを頻繁に鳴らしながら通過する。


(水沼〜花輪間の第四種踏切。※上り桐生行き列車の最後尾から、間藤方を撮影。)

大きく視界が開け、線路際に民家が多くなってくると、
水沼駅から所要時間6分で、花輪駅(はなわ-)に到着する。
足尾鐡道開通時の大正元年(1912年)12月開業、起点の桐生駅から8駅目、21.0km地点、
所在地はみどり市東町花輪(あずまちょうはなわ)、標高292mになる。
以前は、列車交換設備が設置された主要駅であったが、国鉄時代の合理化で撤去されてしまい、
単式ホームと新しく建て直された駅舎がある、無人駅になっている。


(花輪駅。※上り桐生行き列車の最後尾から、間藤方を撮影。)

また、この花輪は、足尾銅山から銅を運んだ「銅街道(あかがねかいどう)」の旧宿場町で、
みどり市役所の支所や農協もあり、町も比較的大きい。
幾つかの文化財が残っているそうなので、帰路に途中下車してみよう。



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運転士の運転の妨げになる為、全て、最後尾から後方風景を撮影しています。
進行方向の間藤方の写真は、上り桐生行き列車の最後尾から撮影しています。

2016年1月13日再編集
2016年12月7日再編集(文体変更・文章追加・画像整理)

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category: わたらせ渓谷鐵道1日目 29話

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