hmdの鐵たびブログ ローカル線の旅

のんびりローカル線の鉄道旅を、写真を中心に「見る紀行文」で長期連載しています。

【175】信州松代、あるローカル線の最後の秋に訪ねて・・・長野電鉄屋代線(20・1日目最終)松代駅から屋代駅へ&郷土料理編。  


時刻は、17時を丁度過ぎた所である。
16時半に日没になっており、17時10分頃には、完全に暗くなる。
周辺が高い山々に囲まれている山国の為、日の入りも早く、本当に釣瓶落としだ。

明日も、屋代線に乗るので、市営観光駐車場に自家用車を一晩駐めて置き、
宿泊先のビジネスホテルがある屋代駅まで、屋代線で行こう。
なお、下り屋代行き電車が行ってしまったばかりなので、次は1時間後になる。
着替えが入ったバックを車に取りに行き、駅前スーパーで飲料等を買い物した後、松代駅に向かう。

次の下り屋代行き電車の発車30分前に、駅待合室に入る。
観光客や先客も、誰ひとり居らず、ひっそりとしている・・・
ロングベンチに座り、木造駅舎の夜の雰囲気を楽しもう。
駅長氏居るが、事務室奥で仕事中で、出札口に案内板が立てかけられている。

IMGP8692.jpg

駅の待合室には、地元・松代中学校の生徒達が発行した
「ありがとう屋代線新聞」と言う手作り新聞が置いてあり、
松代駅長K氏のインタビュー記事を読んでみると・・・
松代駅は、昭和41年から42年(1966-1967年)頃が、利用客数のピークだったそうで、
それ以降は減少し、現在は最盛期の15%位になっているそうだ。
最盛期の頃は、1日に勤務する駅職員数も7-8人程おり、大変活気があったとの事。

なお、屋代線の利用客数は、年間最大330万人から46万人(平成21年度)まで、
落ち込んでしまっている。
また、屋代線自体が、東京方面への貨物輸送を目的として建設された路線だった為、
鉄道貨物輸送の廃止後にも、収益が大幅に落ち込んだと思われる。

現在、100円の収益を上げるのに、277円の経費が掛かっており、
赤字額が年間1億7千万円、累計赤字額が50億円を超えている。
なお、営業係数(※)200を越える中小ローカル鉄道は、秋田内陸縦貫鉄道(秋田県東部)、
いすみ鉄道(千葉県東部)、由利高原鉄道(秋田県南西部)があるが、
それらの鉄道会社よりも高く、全国でもワーストの状況である。
ちなみに、殆どの中小ローカル鉄道や第三セクター鉄道は、営業係数100-150位になっている。

また、鉄道ファンとして、木造駅舎が残っている事は嬉しいが、
地元利用者の立場から、老朽化の激しい木造駅舎の建て替えが必要である事や、
古いレール等の鉄道設備更新の必要性も感じる。
試算でも、この鉄道設備を維持する為には、30億円以上の別途費用が掛かるとの事で、
毎年の運行の赤字と合わせて、費用対効果の面で難しいだろう。

よって、屋代線廃止の理由は・・・
・大幅な利用客の減少。平成10年度と比べても、約40%も減少している事。
・今後、沿線の長野市・須坂市・千曲市が、高齢化や人口減少が見込まれる事。
・沿線から長野市中心部へのバス網が発達しており、また、自家用車利用率が高い事。
・赤字補填と鉄道設備の維持や更新に、巨額の資金が必要な事。
・長野電鉄の経営の足を引っ張っており、いち私企業で維持出来る限界を超えている事。
等が主な理由である。

屋代線が経常黒字になる最低の年間乗客数は、現在の約3倍の130万人だそうだ。
なお、第三セクター方式も考えられるが、地方自治体の財務状況が厳しい中、
黒字化の見込みが低い鉄道を抱え込むのは、リスクが大き過ぎる。
国鉄ローカル線の第三セクター化が、全国で盛んだった1980年代後半に転換し、
電化設備維持にコストが掛かる電車運行を止めて、ディーゼルカー導入による
低コスト化を行なっていれば、現状は違っていたかもしれない。

発車時刻の15分前に、駅長氏がやって来たので、フリー乗車券を見せる。
駐車場の件も尋ねた所、「大丈夫だよ。」との事で、安心する。

夜のローカル線駅は哀愁がたっぷりで、昼間とは、全く違う表情を見せてくれる。
少しひんやりとした秋の夜風が、ホームを吹き抜けて行く。

IMGP7476.jpg
(1・2番線ホームから、駅舎側3番線ホームを望む。)
IMGP7482.jpg
(改札口と待合室が、煌々と灯っている。)
IMGP7468.jpg
(屋代方の赤信号とスプリングポイントの青いライトが、暗闇に輝く。)
IMGP8712.jpg
(誰も居ない、下り屋代方面1・2番線ホーム。)

++++++++++++++++++++++++++++++++++
【停車駅】◇→列車交換可能駅
松代◇1800==象山口==岩野==雨宮==東屋代==1815屋代(終点)
下り423列車・屋代行き(←3531+3521・3500系O1編成2両編成)
++++++++++++++++++++++++++++++++++

突然、構内踏切が鳴り出し、改札前のホーム柱に設置してある
接近警報機の「プー・プー・プー」と言う、大きな電子音も鳴り始める。

18時丁度発の下り電車が、ヘッドライトを眩しく照らしながら到着。
2両編成の乗客は3人だけで下車は無く、
いつの間にか、男性客1人と年配の夫婦がやって来ていて、自分を含めて4人が乗車する。

松代駅を発車し、レールとモーターの音を鳴り響かせながら、淡々と走る。
自動アナウンスの女性の無機質な声が、より寂しく車内に響き、
窓の外の人家の明かりも少なく、真っ暗だ。
途中の四つの駅に停まるが、乗降客は居らず、ひっそりとしている。

所要時間15分で、屋代駅5番線に到着。
運転士に、明日も乗る事を伝え、二日間有効のフリー乗車券を持ち帰ろう。
なお、しなの鉄道に乗り換えの場合は、着駅清算用の乗り換え証明書を貰う事になっている。

IMGP7498.jpg
IMGP8688.jpg

屋代駅は屋代線の終点であり、しなの鉄道との接続駅で、終日有人駅になっている。
この5番線ホームは、駅舎から一番遠い山側にあり、古い木造の旅客上屋と待合室がある。
ホームは照明が少ない為に薄暗く、コンパクトデジタルカメラでは撮影が難しいので、
明朝に改めて見学する事にしよう。

今夜は、屋代駅前のビジネスホテル・ルートインコート千曲更埴(ちくまこうしょく)に、
チェックインする。ちなみに、「更埴」の地名は、市町村合併前の千曲市の市名だそうだ。

部屋に入り、荷物を置いて小休憩後、夕食の手配を考える。
屋代駅に駅弁があれば、夕食用に手配するが、販売撤退してしまった様だ。
ホテルのフロント係氏に、郷土料理が食べられる店を紹介して貰い、外に出かけよう。

屋代駅前にある、紹介して貰った料理店「味処科野(しなの)」に入る。
「ホテルから紹介を受け、夕食を摂りたい。」と女将に伝えた所、快く案内して貰う。

IMGP7522.jpg

女将に、地元の郷土料理がないかと尋ねた所、「おしぼりうどん」(900円)が
お勧めとの事。早速、それを注文する。

IMGP7520.jpg

温かい釜あげうどんを、つけ汁に漬けて食べるそうだ。
つけ汁が独特で、ねずみ大根と言う大根おろし汁に信州味噌を和える。
ねずみ大根は、地元特産の小さな大根で、長野の伝統的野菜になっている。
長野県坂城町ねずみ大根振興審議会公式HP「ねずみ大根とは?」

ねずみ大根のおろし汁は、ツーンと来る苦味とホンワカした甘みが合わさっており、独特な味だ。
それに、信州味噌を和えると、風味が良くなってマイルドになる。
味噌はいっぺんに入れると、辛くなり過ぎるので、少しずつ入れるのがコツだそうで、
味噌の代わりに、醤油を入れる場合もあるとの事。
食べてみると・・・ツーンとした辛さの後に、大根おろしのふわっとした甘みが少しあり、
後味はすっきりした感じである。味噌を入れると、徐々にコクが出てくるので、また違う味になる。

以前、テレビの某人気番組で、長野の郷土料理として紹介されたそうだが、
長野市や松代町に無いそうで、この屋代周辺の更埴エリアだけの郷土料理だそうだ。

饂飩だけでは物足りないので、お勧めの「鶏鉄板焼き」(600円)とサワー(350円)も、
同時注文してある。
柔らかい鶏肉に程良い甘みのあるタレがたっぷり絡めてあり、これも美味しい。

IMGP7512.jpg

信州で食べる料理の醤油味は、甘みがあるのにさっぱりとしているので、
地元定番の信州醤油メーカーはあるのか尋ねた所、特に決まっていないとの事。
信州味噌メーカーは今も沢山あるが、殆どの地元醤油メーカーは廃業しているそうだ。
どうやら、醤油の味付け方に、その理由があるのかもしれない。

【しなの鉄道屋代駅前「味処科野(しなの)」】
長野県千曲市小島3145-1 駅前ビルCODY 1F 電話(026)272-4151
[営業時間]昼11時30分-14時、夜17時-23時。お一人様でもご利用可。
[休み]毎週日曜日(年末年始・お盆期間については、お問い合わせ下さい。)
マピオン電子地図(屋代駅前 味処科野 1/1,500)※駐車場は無い模様です。
他、名物の蕎麦料理や郷土料理が食べられ、酒や小料理もリーズナブルである。是非、立ち寄りたい。

腹いっぱいになり、女将にお礼を言うと、
「こちらにいらした時は、また来てください。」と、暖かく見送りして頂いた。

ホテルに戻ろう。
明日も、初電から乗車なので、風呂に入り、早めに就寝する事にする。

(1日目・終)



◆長野電鉄屋代線 一日目 乗車記録◆
下り列車2本、上り列車4本に乗車。一日目は、松代-須坂間に訪問。

【駅訪問】
5駅(信濃川田、若穂、綿内、須坂、松代)※うち、木造駅舎駅は3駅、木造待合所駅は1駅。

【途中下車観光】
1カ所(松代5時間・昼食時間含む)

【グルメ】
[昼食・おやきや総本家松代店/松代・真田公園横]
ざる蕎麦(680円)、おやき2個(1個150円)、地元産林檎100%ジュース(300円)
[夕食・味処科野/屋代駅前]
おしぼりうどん(900円)、鶏鉄板焼き(600円)、サワー(350円)、あさり大根(お通し・300円)

【運賃】
長電フリー乗車券(二日間有効・大人2,260円、一日あたり1,130円)

【時刻表】
自家用車で松代駅まで行き、パークアンドライド方式で乗車。
全て国道経由、松代まで251.3km、所要時間約6時間、燃料代約3,400円。

松代0701 上り404列車・須坂行き
0711
信濃川田0752 上り406列車・須坂行き ※木造駅舎見学
0755
若穂0838 上り408列車・須坂行き ※木造待合室見学
0840
綿内0942 上り410列車・須坂行き ※木造駅舎見学
0950
須坂1105 下り413列車・屋代行き ※駅見学・車両区見学
1128
松代1800 下り423列車・屋代行き ※木造駅舎見学・下車観光
1815
屋代(宿泊)



にほんブログ村 鉄道ブログ 鉄道旅行へ

【謝意】
「味処科野」様、おしぼりうどんの紹介と店紹介の許可を頂き、
ありがとうございます。厚くお礼申し上げます

【参考文献】
「長野電鉄屋代線総合連携計画(概況版)」 長野市・須坂市・千曲市(平成22年3月発行)

(※)営業係数
100円の営業収入を得るのに掛かる、営業費用のこと。100未満なら黒字、100以上なら赤字。
国鉄末期のローカル線廃線の検討時も、目安として使われた。
「日本一の赤字線」と言われた、北海道・国鉄美幸線は3859だった。

2016年1月13日再編集
2016年8月19日再編集(文体変更・文章追加・画像整理)

© hmd all rights reserved.
記事や画像の転載、複製、商用利用等は固くお断り致します。

category: 長野電鉄屋代線1日目 20話

thread: 鉄道旅行 - janre: 旅行

tb: --   cm: --