hmdの鐵たびブログ ローカル線の旅

のんびりローカル線の鉄道旅を、写真を中心に「見る紀行文」で長期連載しています。

【133】遠州湖北と国鉄遺産を訪ねて・・・天竜浜名湖鉄道(36)天竜浜名湖鉄道運転区 その3 転車台&扇形車庫  


鉄道神社から北に20m程入った所に・・・
この運転区のシンボルでもある、国産転車台と扇形車庫(せんけい-)が構えている。
運転区最大の見所であり、期待が高まって来る。

転車台は、運転台が片方にしか向いていない蒸気機関車の向きを転換する鉄道設備で、
折り返し運転の際、列車編成の先頭に機関車を付け替える前に使う。
また、その用途の他に、蒸気機関車を扇形車庫に振り分けたり、
スペースや分岐器(ポイント)の数を省力化する役割もある。

この転車台には、西側の本線に繋がる「キ1・2・3番線」と言われる出発線である三線と、
北側にある行き止まりの留置線が三線、転車台固定用短線一線、
東側の車庫線四線、洗車兼留置線二線、南側の検修線一線の合計十四本の線路が接続している。

IMGP0759_20160724053616381.jpg
(天竜浜名湖鉄道運転区の転車台。国鉄転車台としては、中型と言える。)

橋梁部の銘板を見ると、昭和12年(1937年)製作、発注者は鉄道省(後の国鉄)、
全長17.2mの下路式バランスト型・通称「すて17」の電動式動力付きで、
メーカーは横河橋梁製作所(現・横河ブリッジ)、自重や積載最大荷重は不明である。
設置は、天竜二俣駅開業時の昭和15年(1940年)になる。

なお、国鉄二俣線の蒸気機関車時代末期には、中型テンダー式蒸気機関車C58形を運用しており、
炭水車込みの自重は約100tだったので、それに石炭と水を積んだ満載重量の120t程度までは、
転車台に載せる事が出来たと考えられる。

◆国登録有形文化財リスト「天竜浜名湖鉄道運転区機関車転車台」◆
所在地静岡県浜松市天竜区二俣町阿蔵字坂下230-2
登録日平成10年(1998年)12月11日
登録番号22-0033
年代[設置]昭和15年(1940年)[橋梁部製作]昭和12年(1937年)
構造形式鉄筋コンクリート造り、鉄製橋梁、建築面積232.2㎡、
下路式バランスト型、全長17.2m、自重と積載最大荷重は不明。
特記扇形車庫の手前に位置する。
当時では、標準的な下路式の転車台で、中央に門型の鉄柱を建て、
運転室と共に360度回転する。
天竜浜名湖鉄道運転区の核となる施設で、
扇形車庫と共に天竜浜名湖鉄道のシンボルとなっている。
平成21年(2009年)2月、日本の産業近代化に貢献した施設の例として、
経済産業省認定・近代化産業遺産(続33)にも指定された。
※文化庁公式HPから抜粋、編集。

案内役のK氏から説明があり、転車台の周りに見学者が集まると・・・
ヘルメットを被った係員が転車台運転室に乗り込み、転車の実演をしてくれる。
レールと転車台の段差を踏み越えるガシャン音と橋梁部を転がる鉄の音を響かせて、
TH2110が転車台に最徐行で乗り込んで来る。

そして、ウィーンと言う大きなモーター音と金物が鳴る様なガラガラ音と共に、ゆっくりと回る。
子供達からも、「わぁ」と歓声が上がっている。
今日は見学者が多く、数回転する大サービスで、眼前で見る転車は、とても迫力がある。
なお、普段は、一回転する必要はないので、必要な分だけ動かす程度だそうだ。
ちなみに、現在の天浜線気動車の自重30tの場合、180度回転に、約1分間掛かる。

IMGP0744_20160724052953c19.jpg
IMGP0740_20160724052951b20.jpg
(転車実演。)

実演後には、レール位置を再び合わせ、気動車は車庫1番線に入って行く。
なお、転車台の長さは17.2mであるが、現在の天浜線の気動車は18.5mあり、
頭が若干飛び出てしまうが、前後の台車が転車台に乗るので、問題無いとの事。
ちなみに、国鉄C58形蒸気機関車も、この気動車とほぼ同じ大きさである。

転車台の駆動装置は、ボンネット内に電動牽引機があり、
ピット外周部に敷かれた一本レールの円周軌条を、時計回りに走る。
なお、メーカーは福島製作所である。

IMGP0753.jpg
(転車台の電動駆動装置。)

ボンネットがある方が後方で、庇やステップも付いており、
作業員の人は中には入らずに、ステップに立って操作している。
なお、車庫1番の前の緑色の機械は、台車を車両から外す時に使う大型クレーンだ。

IMGP3826.jpg
(転車台の運転風景。前年春訪問時に撮影。)

なお、転車台の駆動装置には、ブレーキが無い。
マスコン(アクセルに相当)を加減して、レールの位置をぴったり合わせた後、
運転室の前にある大きな黒いレバーを操作して、転車台を固定する。

固定方法は、レールとその外側の塗装してある短いレールの間に楔を打ち込む方式だ。
運転室前の大きなレバーを操作すると、リンク機能で転車台両端の合計4箇所に
楔がスライドして打ち込まれる、両側ノック式と言われるタイプである。
なお、鎖錠装置には幾つかのタイプがあり、京都梅小路蒸気機関車館の転車台に見られる
線路中央部に閂(かんぬき)がある、上ノック式と言われるタイプも多い。

IMGP3831.jpg
(転車台を固定する鎖状装置。)

また、転車台両端に突起が出ているが、人力で回転させる為のテコを差し込む所である。
設置当初は、人力だったのかもしれない。また、停電時等の非常用でもある。
転車台運転室設置部分を除く、三カ所の橋梁部に付いている。

扇形車庫の1番線前から、本線に接続しているキ3番線を望むと・・・
気動車が留まっている右手北側から、キ1番線、キ2番線、キ3番線となり、
キ3番線には、屋根付きの車両検修機器室と自動洗車機、各線に給油機がある。
軽油の地下貯蔵タンクは、キ1番線の右手北側、本線との間にあるそうだ。
昔は此処に、石炭置き場・積み込み場や給水設備があったのだろう。

下路式バランスト型と言われるタイプのこの転車台は、
鉄骨や鉄板で凹状に造り、中央の低い場所にレールを敷いたタイプで、
ピットが浅くなる利点があるが、上路式よりも強度がやや劣るとの事。
また、バランスト型とは、中央の回転部のみで全重量を支える一点支持タイプで、
車両を転車台の重心に上手に載せないと、転車台が回らない。
中央支持部には、ベアリングが入っており、摩耗交換等のメンテナンスも必要である。

IMGP0763_20160724053048029.jpg
(扇形車庫の1番線前から。)

なお、転車台中央の櫓は、電線から電気を取り入れる為の電柱で、
上部の円形装置は360度回転しても、電線が絡まない様にする集電装置になる。

ちなみに、この転車台は、有名サスペンス作家の西村京太郎氏の新作長編推理小説にも
取り上げられており、テレビドラマ化もし、今夏にロケと放送がされている。
Amazon「生死を分ける転車台 天竜浜名湖鉄道の殺意」西村京太郎著
(※リンクのみで、ノーアフィリエイト設定。)

転車台の東側に隣接する扇形車庫を見てみよう。
昭和15年(1940年)築の古い木造大型建築で、これも国登録有形文化財になっている。
昔から、天竜エリアでは、地場産業として林業が大変盛んだったので、
良質な木材をふんだんに使い、丈夫で立派な木造車庫が建てられたとの事だ。

IMGP0748_201607240531285ae.jpg
(扇形車庫。)

かつては、全国の機関区に数多くの扇形車庫があり、一般的な鉄道施設であった。
現在、廃止されたものも含めて、十箇所弱の扇形車庫が現存しているが、
木造は天浜線のものが唯一となり、大変貴重になっている。
ちなみに、有名な京都梅小路、会津や津山の扇形車庫は、コンクリート製だ。
また、平成21年(2009年)2月には、転車台と扇形車庫共に、
日本の産業近代化に貢献した施設として、経済産業省認定の近代化産業遺産にも指定されている。

◆国登録有形文化財リスト「天竜浜名湖鉄道運転区機関車扇形車庫」◆
所在地静岡県浜松市天竜区二俣町阿蔵字坂下230-2
登録日平成10年(1998年)12月11日
登録番号22-0034
年代昭和15年(1940年)
構造形式木造平屋建、波形ストレート鉄板葺、建築面積686.4㎡。
特記転車台とセットとなる。当初は六線分であったが、
転車台から見て右側の二線分が切り縮められており、
他は主として車両の留置に用いられている。
総木造で、庫内に下る柱を少なくする為に力強い架構をもつ。
現在では、数少ない現役扇形庫の好例で、木造として唯一である。
平成21年(2009年)2月、日本の産業近代化に貢献した施設の例として、
経済産業省認定・近代化産業遺産(続33)にも指定。
※文化庁公式HPから抜粋、編集。

北側から順に、1番から4番の合計四両が入庫出来、奥行きは20m弱ある。
屋根がとても高いのは、蒸気機関車の排煙対策の為で、最上部に排煙口が設置されている。
また、扉もとても高く、気動車はレール上から4mの高さがあるので、約6mと言う所だろう。

IMGP0823_20160724053133036.jpg
IMGP0761_20160724053130751.jpg
(各線には、観音開きの大きな木扉が設置されている。)
IMGP0822_201607240531315dd.jpg
(転車実演をしたTH2110とイベント仕様車両のTH9200が入庫している。)

内部を覗いてみると・・・
柱も少なく、大きな梁も無い為、上部は複雑なトラスが組まれた構造になっている。
手前の天井が低く、奥が高くて、広い構造も扇形車庫独特の構造である。

線路下には、床下の点検整備用ピットがあり、
車庫2番には、車両の屋根上を見る為の鋼鉄製の点検台が設置されている。
上部のネットは、古い建物であるので、落下による損害事故防止か、鳥害防止の為だろう。

IMGP3833_1.jpg
(2番線扇形車庫内部。社員の監督の下、扉の外から前年見学時に撮影。)

なお、6番線まで車庫があったそうだが、5・6番の部分は取り壊されて、
洗車線兼留置線になっており、道床のコンクリートやピットはそのまま残っている。
また、5・6番線側の側壁は、波形トタンで保護されている。

IMGP0755_201607240533152fb.jpg
(扇形車庫南隣の洗車線兼留置線。)

洗車線右隣の南側には、車両検修庫があり、こちらは新しいプレハブの建物になっている。
現在、此処で、気動車の点検整備を行なっている。

IMGP0754.jpg
(車両検修区。)

転車台の北側にも、開業当時の平屋建ての木造建物がある。
文化財には未登録だが、国鉄時代の事務用品や備品等を管理する部署が入っていたそうだ。
また、西側のシャッター付きブロック塀の小屋は、信号機器室になる。

IMGP3813_201607240533139eb.jpg
(施設倉庫。前年訪問時に撮影。)

施設倉庫の手前には、極短い線路が転車台から延びている。
車両を留置出来る長さではなく、この対角線上には検修線があるので、
転車台を固定する為の線路と思われる。

なお、この建物西側にある四本有る行き止まりの留置線は、二本は現在も使われているが、
一本は廃台車置き場、残る一本が、この転車台固定の短線になっている。



にほんブログ村鉄道ブログ鉄道旅行へ

天竜浜名湖鉄道営業部より、当方ブログでの公開許可を頂いております。

2016年1月7日再編集
2016年7月24日再編集(文体変更・文章追加・画像整理)

© hmd All Rights Reserved.
記事や画像の転載、複製、商用利用等は固くお断り致します。

category: 天竜浜名湖鉄道2日目 22話

thread: 鉄道旅行 - janre: 旅行

tb: --   cm: --