hmdの鐵たびブログ ローカル線の旅

のんびりローカル線の鉄道旅を、写真を中心に「見る紀行文」で長期連載しています。

【93】木造レトロ駅めぐり・・・大井川鐵道2011(10)青部駅  


SL急行列車の見学と撮影も終わり、彼らの出発の前に千頭駅を離れる事にしよう。
13時50分発の上り金谷行きの電車に乗り込み、ふたつ先の青部駅を目指す。

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千頭1350=====崎平=====1357青部
上り 普通 金谷行き
大井川鐵道16000系 (←16003+16103) 2両編成
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元・近鉄特急の16000系に乗車、車内の乗客は10人位だ。
フワフワとした感じの乗り心地の16000系に、体を左右に揺られながら、
千頭駅手前のカーブを曲がり、大井川第四橋梁、田代トンネル、大井川第三橋梁を連続通過し、
下り勾配をレールのジョイントを食みながら軽快に下る。
カーブ途中にある単式一線の崎平駅に停車し、その先の大井川第二橋梁を渡ると、
青部駅(あおべ-)に到着する。



この駅で降りてみよう。
乗車してきた上り金谷行きが、直ぐに発車して行く。

駅ホームは、ほぼ東西に配された一面一線の単式ホームで、
駅構内は変更された形跡があり、専用の構内踏切は無くなっている。
千頭方にスロープと、警報機や遮断機の無い車が一台だけ通れる幅の小さな踏切があり、
構内踏切と併用になっている。
また、ホームの川側には大きな桜の老木が何本か並んでいて、この駅も桜の名所になっている。

IMGP9304.jpg
(青部駅ホーム。)

この青部駅は、昭和6年(1931年)4月開業、起点の金谷駅からは36.1km地点、
所要時間約1時間、所在地は榛原郡(はいばら-)川根本町青部、標高265mにある。
青部駅から終点千頭駅までの約3kmは、三つの鉄橋の架橋と田代トンネル開削に時間を要した為、
同年12月に開通になり、約8ヶ月間の短い間は終着駅だった。

なお、この青部駅から終点の千頭駅までは、大きく蛇行する大井川を三回も渡り、
本線最急勾配の22‰のトンネルをノミによる手掘りで開通させたので、難航したそうだ。

IMGP9312.jpg
(青部駅ホーム全景。)

青部は、大井川が激しく蛇行している東岸の無双連山(標高1,084m)の山裾が、
大井川に面する東西750m・南北460mの平坦地であり、
北西に向いた斜面には、茶畑とその中に住宅が点在する静かな里になっている。
駅は、青部地区の北西の外れにあり、地区の人口は約160人との事だ。


(国土地理院国土電子Web・青部周辺)

地名の由来は、旧地名の「志太郡刑部郷(しだぐんおさかべごう)」が訛ったもので、
江戸時代の千頭・青部周辺は、幕府直轄領(天領)だったそうである。
戦後の電源開発が盛んだった頃は、中部電力の社宅もあり、今よりも人口が多かったそうだ。
また、ホームから大井川側を見ると、高い木立があって見え無いが、
対岸に、昭和11年(1936年)から稼動している中部電力大井川発電所と吊り橋の連絡橋がある。

金谷方を望むと、青部地区と沢間地区を隔てる山裾を潜る沢間トンネルが見える。
ロープが張られた南側は旧ホームで、横には竹林が迫り、その向こうに大井川がある。

IMGP9305.jpg
(金谷方。旧ホームが反対側にある。)

沢間トンネル内の勾配を登ると、この青部駅付近でほぼ水平になるが、
再び、20‰の「青部坂」と言われる長い坂を登る。
なお、次の崎平駅の標高は20m上がった約280m、終点の千頭は40m上がった約300mになり、
ずっと登り調子であるので、SL列車は特に勢い良く登坂する区間だ。

遠くの線路を越えている橋は、対岸の崎平地区から青部地区に接続するハーフループの道路で、
東西に移動しにくい地形のこの青部地区は、やや交通の難所になっている。
将来的には、対岸の国道362号線は対向車とのすれ違いが困難な狭路の為、
元藤川地区から藤沢橋を渡り、青部駅横を通る青部バイパスを建設して、
このハーフループに接続し、崎平地区まで繋げる道路改良計画があるそうだ。

IMGP9309.jpg
(千頭方。向こうに、名物の一本だけの花桃がある。)

開放式待合所はホームの長さに対しては大きく、木造トタン造りになっている。
駅舎とホームが離れている為、駅舎内の待合室は、あまり使われていない様子だ。

ホームの擁壁を良く見ると、嵩上げ跡の他に昔のスロープの様な跡があり、
昔は、この位置に構内踏切があった様である。
大井川鐵道本線の電化は、戦後の昭和24年(1949年)12月になり、
ホームの嵩上げ部分の下にあるので、構内踏切があったのはそれ以前と思われる。
この大きな待合室も、ホーム移動と嵩上げ後の設置だろう。

IMGP9323.jpg
IMGP9326.jpg
(ホーム上の開放式待合所。)

駅舎の南側にも、旧ホームと思われる遺構がそのまま残っており、
今は、レール置き場になっている。
この旧ホームの手前も大きな広場があるので、貨物ホームと共用だったのかもしれない。

IMGP9306.jpg
(擁壁は、大井川の川石が使われている。道床部の嵩上げにも、使われているそうだ。)

木造駅舎は、現ホームの向かいにあり、その間に柵と広いスペースがある。
以前は、此処にもレールが敷かれていた様だ。
大井川鐵道の標準的な中型木造駅舎で、外装は補修されて状態は良く、
駅長標識が、かつての有人駅の記憶を留めている。
ちなみに、先程の崎平駅も、木造駅舎が残っていたが、現在は取り壊されている。

IMGP9313.jpg
IMGP9314.jpg
IMGP9321.jpg

駅舎内に入ると、待合室の木製ベンチ、出札口や小荷物受付窓口もそのままだが、
がらくたなどが置かれて、やや荒れている。

IMGP9315.jpg
(駅舎待合室内。)

暫くすると・・・古めかしいモーター音と共に14時06分発の下り千頭行き電車が、
沢間トンネルを抜けてやって来た。
この駅での乗降は無く、レールに「コー」と篭った車輪が転がる音を響かせながら、
青部坂をゆっくりと登って行く。

IMGP9317.jpg
(青部駅に到着した21000系下り千頭行き列車。)

木立の向こうから聞こえてくる川の音と発電所の変圧器の微かな音、
繰り返し鳴くホトトギスの鳴き声が聞こえて来る。
今度の14時50分発の金谷行きを待合室のベンチで、ゆっくり待つことにしよう。



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2016年1月21日再編集
2016年6月23日再編集(文体変更・文体変更・画像整理)
2017年3月15日再編集(画像調整)

【謝意】
青部の歴史と地名の由来について、川根本町教育委員会様からご教示頂きました。
厚く御礼申し上げます。

【参考資料】
JCCA協会誌・SLで楽しむ土木遺産「大井川鐵道」(一般社団法人建設コンサルタンツ協会)
静岡県公式HP・島田土木事務所・国道362号線青部バイパス計画(平成23年-27年度)

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category: 大井川鐵道本線2011 全14話

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