hmdの鐵たびブログ ローカル線の旅

のんびりローカル線の鉄道旅を、写真を中心に「見る紀行文」で長期連載しています。

【240】あかがねの鉄路を追って・・・わたらせ渓谷鉄道(48)通洞駅下車観光[その3]足尾歴史館  


通洞駅(つうどう-)の近くには、足尾歴史館と言う郷土資料館がある。
この足尾の鉄道関係の展示もあると聞いたので、行ってみよう。

駅出入口から、ロータリー右手直ぐの軽便鉄道軌道跡のトロ道に入ると、近道が分かれている。
そのまま、わたらせ渓谷鉄道の軌道内に入り、線路を横断する。
渡って良いものかと、思うが・・・所謂、「赤道(あかみち)」と言われる、非公式の踏切である。
鉄道敷設前からの人道であったり、線路先に自宅や畑がある等の特別の理由で黙認されているが、
危険な為に廃止される傾向がある。

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(足尾歴史館への近道。)
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(通洞駅南側の赤道。)

暫く歩くと、駐車場を通り抜けた向こうに、大きな建物が見えてくる。
この足尾歴史館は、元々は、スケートリンク場だったそうだ。
なお、自治体の運営ではなく、NPO法人が運営している純民間資料館であり、
足尾町在住のボランティアが中心となって、運営しているらしい。

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(足尾歴史館外観。)

正面玄関を入ると、かつて、街中を走っていたトロッコの1/12模型が、歓迎してくれる。
玄関横の受付で、一日会員券(入館券)350円を購入。
維持経費は、この会員券の売上で賄われており、運営協力金(カンパ)と言う所だ。

館内一階は、メイン展示場として、足尾銅山の歴史や初代社長・古河市兵衛氏等の人物紹介、
当時の貴重な写真や絵画、銅山の採掘に使用した道具の実物展示、
鉱夫達の暮らしぶり等の民俗の紹介が、広いスペースにゆったり展示してある。
なお、資料や当時の生活道具類などの展示品は、地元住民から譲渡・貸与されており、
地元の大きな協力の上に、成り立っているそうだ。

階段にも設置された大きな写真パネルを見ながら、二階に上がると・・・
小さなカフェがあり、喫茶休憩することも出来る。
また、足尾銅山関連や足尾の軽便鉄道や国鉄足尾線に関する、貴重な書籍も販売している。



実は、この足尾歴史館の最大の見所は、外にある。一階に戻り、外に出てみよう。
スケートリンクだった場所には、軌間610mmの軽便鉄道軌道を敷設してあり、
本物の小型内燃機関車を動態保存し、客車を牽引した走行実演・体験乗車も行っている。
郷土歴史館でありながら、鉄道色の濃い展示が、ここの特徴だ。

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(スケートリンクに設置された、エンドレス線の軽便軌道。)

この足尾町内と周辺では、古河市兵衛氏が馬車鉄道を整備し、
昭和28年(1953年/貨物は2年後に廃止)まで、軽便鉄道が運行されていた。
足尾鐡道(後の国鉄足尾線、現・わたらせ渓谷鐵道)開通以前から、
銅、生活物資や町の人々を乗せて、地元の足として走っていたのである。
その後、馬からガソリン機関車に動力が代わり、機関車時代を再現するコンセプトになっている。
また、足尾の軽便鉄道由来ではないが、他の鉄道で使われた車両も、多数引き取られているそうだ。

今日は、加藤製作所製のガソリンカーが牽引するトロッコ列車が、実演走行中している。
昭和16年前後の製造、いすゞ製のガソリンエンジンDA120を搭載する小型機で、
旧海軍航空基地で施設工事用に導入され、戦後は、民間の土木会社で使われていた。

後ろの赤い客車は、神奈川県横浜市内の向ヶ丘遊園地で、使われていたものとの事。
閉園後、協力関係にある鉄道保存団体が引き取り、足尾歴史館に貸与されている。
状態は良好の様で、テント屋根付きの2両編成となっており、
製造は昭和50年頃、自重は1両あたり約1.0t、定員12名(着座)になる。

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(加藤ワークス・ガソリン機関車。B軸配置の小型機である。)
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(運転席。)

機関車の自重は約4.0t、水冷直列6気筒ガソリンエンジン、排気量6126cc、
最大馬力120馬力だそうで、このエンジンは、当時のバスやトラック等にもよく使われていた。
なお、昔、ガソリンカー(ガソリン気動車)横転事故が起き、引火爆発の大惨事になった為、
ガソリンエンジン搭載車両は、現在の鉄道で運行する事が出来ない。
そのため、現代の気動車は、揮発引火性の低い軽油を使っている。

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(いすゞ製のガソリンエンジンDA120。)

なお、あくまでも、この素晴らしい状態の加藤機は、これでも予備機だそうで・・・
本命があるのだが、今日は休車している模様だ。
軌道の周りを見学していると、加藤ワークスを運転している運転手氏から声がかかり、
旅の記事を書いていると話した所、車輌関係の責任者がいるので、呼んで貰える事になった。

町内で自動車修理業を営んでいる、車輌関係の中心人物であるMさんに会い、
復元時の苦労や状況を聞く事が出来、お目当ての車両を見せて貰える事になった。

この資料館の看板展示車両である、ガソリンカーNo.14である。
当時の写真や図面から、忠実に新規製作された足尾オリジナルのガソリンカーで、
車台は町の鉄工所で一から製作し、当時のフォードエンジンをレストアして搭載してある。
勿論、走行も可能だ。

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(足尾由来のガソリンカーNO.14。)

No.14の近くには、レストア中のオリジナルエンジンも置かれている。
このアメリカ製フォードエンジンA型は、直列四気筒の40馬力ガソリンエンジンだそうだ。
復元にあたり、エンジンの消耗パーツ等をアメリカ本国から取り寄せたり、
元運転手にチェックして貰う等、細部まで入念に復元されている。

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(フォードA型ガソリンエンジン。)

更に、ガソリンカーが牽引していた客車も、当時のままに復元されており、驚きである。
平成22年製造、自重約1.0t、定員22名(着座)、木製内装の素晴らしい出来になっている。
当時の写真は残っていたが、詳細な設計図が無く、復元は不可能と思われたが、
地元の自作模型愛好家が忠実に模型化しており、協力を得て、復元したとの事。

No.14機関車と合わせて、当時の編成を再現出来るのは、素晴らしい。
機関車が小型で、町内は線路の勾配が多い為、一両のみの牽引だったそうだ。
なお、窓下の「へ」に「一」はヤマイチこと、古河鉱業を表し、下の番号26が車体番号である。

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(ガソリンカーNo.14に連結された客車。)
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(客車側面。「一般定時」のサボは、定期列車を示す。)
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(車内の様子。ハンドメイドと思えない、完成度である。)

M氏の御厚意で、ガソリンカーと加藤ワークスのツーショットもして貰い、大感激である。
静かな山里に、フォードといすゞのエンジンの音が、共に鳴り響く・・・。

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(ガソリンカーNo.14と加藤ワークスのツーショット。)

また、軌道円周内には、静態保存の車両や復元中の車両が、幾つか保管されている。
この機関車は、国産ガソリン機関車の最古のものらしく、大変貴重なものだそうだ。
メーカーは渡邊興助商店(わたなべようすけ-)、昭和4年(1929年)頃製作の土木工事用機関車で、
エンジンは米国ライカミング製、変速機が原始的な摩擦式の珍しいものとの事。

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(渡邊興助商店製国産ガソリン機関車。)

工事現場や鉱山で使われたトロッコも、多数保存されている。
この草臥れ感のある木板が良い味を出しており、トロッコ好きには、堪らないだろう。

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(古いトロッコ車両。)

線路脇には、懐かしいカルテックス軽油計量器もあり、このマークも懐かしい。
これは、静態保存になっているそうだ。
なお、カルテックスは、アメリカの国際石油資本シェブロンのブランドで、
当時の日本石油は資本関係があり、このカルテックスマークを看板に使っていた。

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(カルテックス軽油計量器。奥の給油機はガソリン用で、機関車の給油に使っている。)
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(アナログなメーター部分。)

この静かな山里に、本物のトロッコが動態保存されているとは、驚きである。
M氏に御礼を言い、通洞駅に戻ろう。

【足尾歴史館ご案内】
毎週月曜日(祝日は振替で翌日)と、12月1日から3月31日までは休館。
ガソリンカーは、運転日が定められているので、事前に公式HPを参照の事。
NPO法人足尾歴史館公式HP



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足尾歴史館より、記事と写真の掲載許可を頂いております。厚く御礼申し上げます。
車両関係の責任者のMさま、ありがとうございました。

足尾歴史館の訪問は、追加取材時になります。
リコーGRD4での撮影の為、若干色調が異なります。ご容赦下さい。

2015年12月5日再編集
2016年12月15日再編集(文体変更・文章追加・画像整理)
2017年4月30日文章加筆・校正

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category: わたらせ渓谷鐵道2日目 15話

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