hmdの鐵たびブログ ローカル線の旅

のんびりローカル線の鉄道旅を、写真を中心に「見る紀行文」で長期連載しています。

【237】あかがねの鉄路を追って・・・わたらせ渓谷鉄道(45)通洞駅  




足尾駅から、軽便軌道跡のトロ道の歩き鉄をして、通洞駅(つうどう-)に到着する。
時刻は、13時30分前・・・先ずは、駅を見学してみよう。
勿論、国の登録有形文化財に指定された、貴重な文化財駅になっている。

大正元年(1912年)12月開業、起点の桐生から41.9km地点、14駅目、
所要時間約1時間20分、栃木県日光市足尾町松原、標高640mになる。
足尾町中心部にあり、役場、学校や観光施設も至近にある事から、町の玄関駅となっており、
駅名が町名ではない玄関駅は、全国的に珍しいかもしれない。
なお、近くの足尾銅山の主要坑道名が、駅名の由来になっているそうだ。


(駅前からの通洞駅。)

駅舎の土台部には、大きな銅銘板が埋め込まれている。
大正15年(1926年)頃、地元名士の青井勇氏によって作詞された、郷土曲の歌碑である。
鉱都として栄華を極めた頃が偲ばれ、今でも、町民に親しまれているとの事。

「足尾の四季」

春晴千里水清く 霞とまごう桜花 春酣の渡良瀬や
夏庚申の滝の音 緑滴る満山に 雲紅の夕日影
薄戦く山の峰 脱硫塔の影黒く 月中天に秋深し
男体颪吹き荒れて 白凱々の備前楯 幌馬車急ぐ暮れの町

作詞・青井勇


IMGP4022.jpg
(通洞駅前の歌碑「足尾の四季」。)

柱や梁が外に出ている、ハーフティンバー様式の北ヨーロッパ由来の洋風木造駅舎は、
町の北西側の山際高台に建てられている。
竣工から100年を越え、わたらせ渓谷鐵道の駅の中では、唯一の洋風建築駅であり、
隣駅の典型的な和風ローカル線風情の足尾駅との対比も面白い。

斬新さを感じる大きな縦二段窓も特徴で、ハーフティンバー屋根も高いが、平屋建てになる。
窓外下部にも、手摺状の木造装飾があり、凝った造りになっている。


(駅出入口周辺。)

(窓周辺。縦型二段窓の木枠も横型で、大きいのが特徴だ。)

幅広の急なコンクリート石段を登ると、直ぐに大きな駅出入口があり、
コンクリート叩きの床と白天井の待合室に入る。
大間々駅や足尾駅よりも、ひと回り小さいが、わたらせ渓谷鐵道の駅では大きな方だ。
桐生方に壁据付のL形配置の長ベンチがあり、壁の窓面積が非常に大きいので、
当時の和風木造駅舎と比べても、とても明るく、ハイカラに感じただろう。


(待合室と改札口。)

駅出入口を入って右手の駅舎中央部には、有人の出札口がある。
時間限定ではあるが、硬券切符を発券しており、鉄道ファンが購入している姿も良く見かける。
左側の一段低いテーブルと引き戸の出入口は、鉄道手小荷物窓口跡になる。
なお、春・夏・秋は毎日10時から15時40分、12月1日から3月19日までは毎週火曜日(同時間)の
窓口営業になる。冬季は、足尾駅と掛け持ち勤務になっている(足尾駅の勤務後、この駅に勤務)。

駅事務室は改築されており、駅員詰め所を出札口のみに小さく造り直し、予備の待合室として開放している。
引き戸があるのは足尾駅と同じ構造で、手小荷物の取扱量が多い為、取り付けられたのだろう。
奥に行くと、現役の駅でありながら、ホーム出窓内側や三畳程度の畳敷きの宿直室等も見学出来る。


(出札口と手小荷物窓口跡。)
IMGP3898.jpg
(奥の宿直室。今も、駅員の控室として、使われているらしい。)

年配のにこやかなベテラン男性駅長氏が勤務しており、挨拶をする。
列車の発着時刻の間、最近の足尾の町の様子や、わたらせ渓谷鐵道の乗車状況等を話してくれた。
「古い建物財産標等が、残っていませんか?」と尋ねると・・・
元・駅事務室内のホーム出窓部分の高所に、竣工・改築年月日の木銘板があるとの事。
「開通 大正元年12月31日 改築 昭和11年2月14日(数字は漢数字)」と記されている。
改築年が記されているので、国鉄時代の改築時に取り付けられたものであろう。


(竣工・改築年月日を記した木札。)

ホーム出窓部分には、古い大きな金庫も置かれている。
おそらく、駅業務で使われていたもので、あまりにも重い為に処分されなかった様だ。
扉に付けられたメーカーズプレートが鈍い光り、刻印は右横書なので、大正から昭和初期のものの様だ。


(駅で使われたらしい大金庫。)

(メーカーズプレート。「大日本東京小倉製」と刻印されている。)

通洞駅の改札口は、駅出入口から直線上の最短距離にあり、木製のコの字型ラッチが残っている。
直ぐにホームに出るが、単式ホームの棒線駅であり、列車交換は出来ない。
その為、ディーゼル機関車牽引の「トロッコわたらせ渓谷号」の観光客は、
殆どがこの駅で下車するが、機回しの為に次の足尾駅まで運行されている。


(ホーム側からの改札口。)
IMGP3863.jpg
(改札口周辺と旅客上屋。旅客上屋は線路側には、かかっていない。)

ホームを歩いてみよう。
5両編成程度の長さのホームになっており、駅舎は間藤方端に寄っている。
間藤方の駅舎寄りは嵩上げと舗装がされているが、桐生方に砂利敷きの客車ホーム部分が残り、
擁壁は間知石(けんちいし)の割石積みになっている。

IMGP3871.jpg
(桐生方からのホーム全景。)

桐生方を眺めると、長い急勾配を登り切った所に通洞駅があるので、
この先は、20パーミル以上の長い下り勾配が直ぐに始まる。
なお、線路に渡り板が取り付けられているのは、赤道(あかみち※)である。

また、この駅には貨物側線や貨物ホームの跡が無いが、
桐生方の左側にやや広いスペースがあるので、この付近にあったのかもしれない。

IMGP3869.jpg
(桐生方と赤道。)

間藤方は、緩くカーブをした後に、警報機や遮断機の無い第四種踏切と渋川橋梁を渡る。
駅の並びには、ミニ公園が整備されており、トロッコ列車の発車見学等が出来る様になっている。
なお、踏切横の緑トタン屋根小屋の右横が、足尾駅から歩いて来たトロ道である。

IMGP3855.jpg
(間藤方。)

駅舎と旅客上屋を見学していると、駅長氏がやって来て、「見てごらん。」と屋根裏を指差す。
ふと見上げると・・・屋根の棟下に、古い電球傘がひとつだけ残っている。
駅長氏の話では、開業当時のものとの事で、昔はこの電球傘が沢山あったのだろう。
シンプルでありながら、何処かしら、可愛い感じがする。


(古い電球笠。)

通洞駅周辺には、鉄道関連施設や鉱山施設の見所が多数あるそうだ。
駅長氏に御礼を言って、昼食と観光に出かける事にしよう。


(ホームからの駅舎。)

◆国登録有形文化財リスト◆
「わたらせ渓谷鐵道通洞駅本屋及びプラットホーム」
所在地栃木県日光市足尾町松原字新梨子裏5400-7
登録日平成21年(2009年)11月2日
年代大正元年(1912年)竣工、昭和11年(1936年)改修。
構造形式[駅舎本屋]木造平屋建、瓦葺、建築面積159m²、石段付。
[プラットホーム]石造、延長103m。
特記桁行10m・梁間6.8mの事務室と桁行6.8m・梁間7.3mの待合室をT字形に配し、
本屋西面には103m長のプラットホームを設ける。
外観はモルタル塗仕上げを基調とし、独特のハーフティンバー風の装飾を施す。
(文化庁文化遺産データベースを参照・編集。)



にほんブログ村 鉄道ブログ 鉄道旅行へ

(※)
非公認の踏切。線路の先に住宅や畑があったりする場合や古くからの通用路などが、
鉄道会社の黙認で設置される場合がある。しかし、危険な為、近年は廃止される傾向である。

2015年12月5日再編集
2016年12月15日再編集(文体変更・文章追加・画像整理)
2017年4月30日文章加筆・校正

© hmd all rights reserved.
記事や画像の転載、複製、商業利用等は固くお断り致します。

category: わたらせ渓谷鐵道2日目 15話

thread: 鉄道旅行 - janre: 旅行

tb: --   cm: --