hmdの鐵たびブログ ローカル線の旅

のんびりローカル線の鉄道旅を、写真を中心に「見る紀行文」で長期連載しています。

【203】あかがねの鉄路を追って・・・わたらせ渓谷鐡道(11)神戸駅下車観光[その2]草木ダム  




大きな掛樋(かけひ)の場所を過ぎて、遊歩道を更に進んで行くと・・・
赤い小さなローゼ橋である、わらべ橋【赤色マーカー】が架かっている。
橋袂の銘板を見ると、平成2年(1990年)3月の竣工との事だ。

遊歩道は渡良瀬川右岸にあるが、この橋で、向かいの左岸に渡る事が出来る。
しかし、川面からの高さも相当あり、幅1m程度の人道専用橋なので、スリルがある。



(わらべ橋と渓谷。※下写真は、渡った先の左岸から撮影。)

実は、高所恐怖症なので、恐る恐る、橋の中央を慎重に歩く・・・。
橋の中央付近から、下流の桐生方を望むと、
切り立った崖の深いV字谷になっており、流れも大変穏やかな淵になっている。
ここは、新緑や紅葉の時期は、素晴らしいそうだ。


(わらべ橋上から、渡良瀬川下流方の渓谷を望む。)

わらべ橋を渡って、左手に行くと、ダム直下に注いでいる柱戸川を小橋で渡り、
水辺公園である「水の広場」【散歩マーカー】に出る。
草木ダム下の緑化公園として整備され、公園を囲む土手に桜が沢山植えられており、
地元の隠れた花見名所になっている。丁度、桜が満開で、凄い光景だ。


(桜が上下に取り囲んでいる、水の広場。)
IMGP2306.jpg
(わらべ橋と水の広場。下の平坦部分は、ダム放水時の安全確保の為らしい。)

この公園の南側には、東町座間地区(あずままちざま-)の集落があり、
ダム建設の際に、地元福利施設として整備された野球場やプールのある東運動公園、
童話ふるさと館や落差20mの「柱戸の不動滝」【水マーカー】がある。

IMGP2303.jpg
(観光案内板。)

この公園からは、草木ダムの威容を正面から見る事が出来る。
とても巨大な重力式コンクリートダムで、高さは140m、横の長さは405m、
昭和51年(1976年)11月に竣工した、発電、取水、洪水対策を兼ねた多目的ダムであり、
国土交通省の管轄となるそうだ。


(草木ダム。)

草木ダムのデザインは、オーソドックスな直線基調であるが、
スマートな印象を受け、ラジアルゲート4門の非常用大型洪水吐が圧巻だ。
ちなみに、通常の放流時は、発電所横の利水バルブ(最大毎秒65m立方)で放流、
間に合わなくなると、ダム本体中腹中央部のふたつのスリットの常用洪水吐
(オリフィスゲート/最大毎秒540m立方)から、放流を行う。
なお、天辺の非常用洪水吐(クレストゲート/最大毎秒3,650m立方)は、非常時のみ使うそうだ。
今まで、設備点検時以外では、1回しか使われていないとの事。

ダム直下には、ブーンと大きな音を立てている発電所【灰色マーカー】がふたつあり、
東発電所は水圧管路で導水して発電し、東第二発電所は放流水で発電ているそうで、
発電量は約2万KWhと240kWhになる(kWhは、1時間当たりの発電量)。
また、下流の発電所にも、山中を貫くトンネルで、送水しているとの事。
発電所の直ぐ横には、放流水の勢いを和らげる小さな副ダムがあり、
直下の川は真っ直ぐでは無く、大きくカーブしている。

当時、神戸駅を発車した列車は、ダム本体付近で鉄橋を渡り、左岸に渡っていたそうで、
発電所の近くに鉄道トンネル跡が残っている。
このトンネルは、ダム本体工事の為、わらべ橋付近に仮設された鉄橋と共に造られた、
国鉄足尾線の仮線トンネル【灰色マーカー】だそうだ。
現在は、その役割を終えて閉鎖され、入口側の数百メートルが残っている。
勿論、間藤方の出口側は、ダム湖の底に行き当たっている。


(草木ダム建設時の旧国鉄足尾線仮線トンネル跡。)

仮線は1.04kmあったそうで、昭和45年(1970年)10月に着工し、
翌年の昭和46年(1971年)12月に開通している。
その後、本付け替えの草木トンネルが、昭和48年6月に開通し、その役目を終えた。



わらべ橋を再び渡り、右岸の遊歩道に戻ろう。
この旧線遊歩道も、巨大ダムに行く手を立ち塞がれてしまう。
ここからは、つづら折りの急坂で斜面を登り、一気にダムの堤の高さまで上がる。

ダムの高さは、川床から140mあり、少なく見積もっても、100mは登る感じである。
ビル30〜40階分を階段で上がるのと同じなので、結構ハードだ。
草木ダムも、カメラのフレームに収めきれない大きさになり、大迫力である。


(大迫力の草木ダム本体。)

(つづら折りを登る。下に水の広場が見える。)

ダム真下から約20分で、草木ダム右岸の展望台【緑マーカー】に到着する。
少し広い駐車場と休憩所やトイレがあり、数人の若いバイクツーリングの人達と挨拶を交わす。

バイクツーリングライダーの人達は、若くて、初対面であっても、
コミュニケーションのマナーが良い人が多いので、いつも気持ち良い。
なお、このわたらせ渓谷鐡道沿いの国道122号線は、軽いワインディングと景色が楽しめる
関東屈指の人気ツーリングコースで、週末には、多くのライダーの人達が訪れている。


(草木ダム右岸展望台から。左岸にダム管理所がある。天辺も、車で通行出来る。)
IMGP2322.jpg
(目も眩む高さで、ダム本体の傾斜面は45度はある。下の建物は発電所。)

上流方面の草木湖を望むと、遠くには、雪を頂いた日光連山が見える。
湖では、カヌー利用が出来、毎年、花火大会や湖一周マラソン大会も開かれているそうだ。


(草木湖。)

この草木ダムは、当初、神戸ダム(ごうど-)の名称であった。
昭和22年(1947年)9月、カスリーン台風による大水害により、渡良瀬川流域各地で、
700名以上の死者・行方不明者を出す大惨事になった事が、ダム建設のきっかけになっている。
また、当初は、足尾銅山の鉱毒流下防止の役割もあった。


(草木ダム扁額。)

昭和40年(1965年)に調査所が開設され、地元の反対運動等の迂曲を経て、
12年後の昭和52年(1977年)3月に完成している。
この付近は、急峻な地形な上、川も急勾配、工期も短く、難工事だったそうだ。
7名がこの工事で殉職しており、左岸展望台には、大きな慰霊碑が建立されている。

【草木ダムの略史】
昭和22年(1947年)9月 カスリーン台風による大水害。渡良瀬川流域の被災甚大。
昭和40年(1965年)神戸ダム調査所を開設。
昭和42年(1967年)12月 ダム建設開始。
昭和45年(1970年)8月 水没の為、国鉄草木駅の廃止を決定。
昭和45年(1970年)10月 国鉄足尾線の草木トンネル掘削工事開始。
昭和46年(1971年)12月 国鉄足尾線の仮線付け替え工事完了、仮線で営業運転開始。
昭和48年(1973年)3月 国道迂回路完成、供用開始。
昭和48年(1973年)5月 ダム本体工事開始。
昭和48年(1973年)6月 国鉄足尾線の草木トンネル完成、線路の本付け替え完了。
昭和52年(1977年)3月 草木ダム完成。
平成13年(2001年)9月 大量降水の為、初めて、非常用洪水吐を使用。
平成15年(2003年)10月 独立行政法人水資源機構草木ダム管理所へ組織変更。

ダムの高さ140m、横の長さ405m、ダム本体の体積132.11万m立方(本体のみ)、
総貯水量6,050万m立方(うち有効貯水量5,050万m立方)、常時満水位海抜454.0m、
当時の事業費総額約500億円で、鹿島建設と西松建設が施工している。
ちなみに、日本一のダムの高さの黒部ダム(通称・黒四ダム/富山県・黒部川)が、
高さ186m・横の長さ492mなので、草木ダムは国内有数の巨大ダムのひとつである。


(草木ダム諸元の銘板。)

なお、ダム湖による水没の為、渡良瀬川左岸を走っていた国鉄足尾線の旧線と
草木駅が廃止になっている。

休憩所の自動販売機で購入したポカリスエットを飲んで、一息ついた後、
もう少し、上流に行ってみよう。



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【参考資料】
現地観光案内板
独立行政法人水資源機構発行パンフレット「水が支える豊かな社会 草木ダム」

2016年1月13日再編集
2016年12月8日再編集(文体変更・文章追加・画像整理)

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category: わたらせ渓谷鐵道1日目 29話

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