hmdの鐵たびブログ ローカル線の旅

のんびりローカル線の鉄道旅を、写真を中心に「見る紀行文」で長期連載しています。

【196】あかがねの鉄路を追って・・・わたらせ渓谷鐵道(4)車窓風景編 相老駅から本宿駅へ。  




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【停車駅】★→国登録文化財駅、◎→列車交換可能駅
相老◎0645======運動公園======0652大間々★◎
下り711D列車・間藤行き(わ89-315「わたらせIII号」単行)
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相老駅(あいおい-)に1分程の停車をし、直ぐに発車となる。
朝一番の桐生発下り列車なので、まだ、ラッシュ時間帯ではなく、
学校の部活朝練らしい女子中学生が、ふたり乗車して来る。

エンジン音を轟かせながら徐々に加速し、スプリングポイントで単線にまとまると、
東武鉄道桐生線は西に別れて行く。
暫く、緑の多い住宅地内の緩い上り勾配を真っ直ぐに走り、上毛電気鉄道をアンダーパスすると、
その約300m先に運動公園駅がある。

運動公園駅も、単式ホームに簡易な鉄骨製旅客上屋のみの小さな無人駅だ。
第三セクター化した後の平成元年(1989年)3月開業の新駅で、
起点の桐生駅から4.2km、所要時間約9分になる。
なお、若干歩くが、公園の反対側にある、上毛電気鉄道の桐生球場駅に乗り換える事も出来る。

IMGP3159.jpg
(運動公園駅を発車する。※列車最後尾から、桐生方を撮影。)

運動公園駅での乗り降りは無く、直ぐに発車となる。
わたらせ渓谷鐵道は、終点の間藤(まとう)に向かって、ずっと登り坂が続く路線だ。
まだ、起点の桐生駅寄りであるが、既に上り基調で、エンジン音もかなり唸る。

踏切をクロスして、国道122号線を斜めに横切り、
緑の多い住宅地の間を走ると、右手の木立の中に急崖と渡良瀬川が一瞬見え、
緩やかな大きなS字カーブの先にある、大間々の桜並木に差し掛かる。
ここは、国道122号線と線路が並走している場所で、線路が国道よりも一段下がっているが、
春には見事な桜が並ぶ下を快走する区間になっている。丁度、桜も満開で美しい。
マピオン電子地図(大間々桜並木・1/8,000)

IMGP3163_20160113210822cd7.jpg
(列車最後尾から、桐生方を撮影。※完全逆光の為、画質の悪さはご容赦を。)

この桜並木を抜けると、右に90度近く大カーブをして、進路を西から北に変更する。
左手に背の高い黄色いビルのビジネスホテルと、右手に大きな農協の肥料工場が見えてくると、
わたらせ渓谷鐵道一の中心駅・大間々駅(おおままえき)に到着する。

大間々駅下り1番線ホームに列車は滑り込み、10分間の列車交換待ちになる。
朝日に照らされたホームは、都市部の通勤路線の様な雑踏は無いが、
のんびりとした中に街の活気を感じる所だ。
通勤客、通学の中高校生や早朝出発の登山家が数人おり、駅員氏も業務を開始している。

大間々駅は、わたらせ渓谷鐵道の本社が置かれ、車両区・検修区と広大な操車場を擁している。
また、古い駅舎やホームは、国登録有形文化財に指定されており、見所の多い駅でもある。
午後に下車観光をする予定なので、後で訪問しよう。





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【停車駅】】【→トンネル、〓→主な鉄橋、★→国登録文化財駅、◎→列車交換可能駅
大間々★◎0702===】連続3つ【===上神梅★===〓=0711本宿
下り711D列車・間藤行き(わ89-315「わたらせIII号」単行)
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上り710D桐生行き・わ89-314「あかがねIII号」と、列車交換後に発車するそうだ。
大間々駅からは、50代男性と女子中学生達が乗車し、乗客は8人となった。
定刻通りに、上り列車が到着すると、7時2分に発車となる。


(大間々駅を発車する。※列車最後尾から桐生方を撮影。)

(大間々駅を過ぎると、第四種踏切も見られ、タイフォンを鳴らして通過する。
   ※上り桐生行き列車最後尾から、間藤方を撮影。)

大間々駅から先は、わたらせ渓谷鐵道の魅力が目白押しになる。
この先の駅は無人駅が多い為、ワンマン運転案内の自動アナウンスも始まる。
急坂ではないが、10パーミル前後のだらだらとした長い上り勾配がずっと続き、
ディーゼルエンジンも唸りながら力強く走る。
急カーブも多い為、フランジ音とレールの踏み面をスライドする金切り音が鳴り響き、
脱線防止レールも多数設置されており、この先の鉄路の挑みを期待させる所だ。

県道踏切を過ぎ、高津戸ダムの湖面を少し眺めた後、住宅地を見下ろす高台を走る。
列車の速度は時速50km位で、登り坂の連続であるが、意外にもパワーがある気動車だ。
すると、右カーブの先に、再び大桜並木が・・・。

ここは、「間坂」と言われる、鉄道写真の有名撮影地(通称・お立ち台)になっている。
数人の鉄道ファンが撮影をしているのが見え、通過後に、お互いに手を振り挨拶をする。
車内の乗客からも、大きな感嘆の声が上がっている。



(間坂の桜並木。※共に、上り桐生行き列車最後尾から、間藤方を撮影。)

間坂の緩やかな大S字カーブを抜けると、急な登り坂になり、鬱蒼とした湿った感じの中を走る。
沿線に人家は無く、右手は渡良瀬川の急崖になっており、木立が多いので、
時々、川面が見える感じだ。なお、国道は、線路よりも一段上の西側を通っている。

国道と県道が接続している、巨大アーチ橋(ローゼ橋)の福岡大橋も見えてきた。
この付近の線路は、道床も狭く、かなりの崖っぷちを走る難区間になっている。


(ローゼ橋の福岡大橋。※上り桐生行き列車の最後尾から、間藤方を撮影。)

(大間々〜上神梅間。※上り桐生行き列車の最後尾から、間藤方を撮影。)

この先、最初の難所である、神梅(かんばい)の狭窄部を通過する。
エンジン音は一段と高鳴り、列車の時速も40km以下と、苦しい感じになる。

神梅の狭窄部は、三つの短いトンネルが連続し、この難区間をやり過ごす。
全て、わたらせ渓谷鐵道の前々身の足利鐡道が、開通時に開削したトンネルになっており、
国登録有形文化財に指定されている。
マピオン電子地図(わたらせ渓谷鐵道第一神梅トンネル付近・1/8,000)

ひとつ目のトンネルの手前に、コンクリートと鉄柱で出来た滑り台の様なものが・・・
架樋(かけひ)と言う、急崖を流れ落ちる雨水や土砂を渡良瀬川に落とすもので、
線路やトンネル内に流れ込まない様にする鉄道保安設備である。
わたらせ渓谷鐵道は、線路際に山が迫る場所も多く、幾つかの大型架樋が設置されている。


(第一神梅トンネルの桐生方ポータルと手振山架樋。
   ※上り桐生行き列車の最後尾から、間藤方を撮影。)

支柱の古レールには、「NO 75A 1907X」や「NO 75A 1907XI」の刻印(※)があるそうで、
明治40年製造の37kgレールとの事。両毛線や高崎線で、使用されていたものかもしれない。
なお、刻印の冒頭に、「NO(ナンバー)」があるので、国産の八幡製鉄所製だろう。

◆国登録有形文化財リスト◆
「わたらせ渓谷鐵道手振山架樋(てぶりやまかけひ)」
所在地群馬県みどり市大間々町桐原
登録日平成21年(2009年)11月2日
登録番号10-0300
年代昭和5年(1930年)
構造形式鉄筋コンクリート造り、樋の長さ14.3m。
特記鉄柱は国産古レールを使用。集水路はラッパ型で特徴的である。
(文化庁公式ページの国指定文化財等データベースを参照・編集。)

タイフォンを鳴らし、エンジンも全開状態で、次々とトンネルに突入する。
この付近は、手振山の急崖が川に迫っている「七曲り」と言われる昔からの難所であり、
三つのトンネルが寄り添う様に連続している


(第二神梅トンネルの桐生方ポータル。向こうのトンネルは、第三神梅トンネルの落石覆い部。
   ※上り桐生行き列車の最後尾から、間藤方を撮影。)

トンネルポータル(断面)は、古典的な馬蹄型断面のレンガ積みトンネルで、
後年になって、防水の為にモルタルを内部壁面に吹き付けてある。
特に、この第二神梅トンネルは、開通当時の様子が良く残っているそうだ。
なお、この馬蹄型のトンネル断面は、山の重みでトンネルが潰れるのを防いでいる。
近年、トンネル掘削技術の発達で、見られなくなっているが、独特な美しさを感じる。

◆国登録有形文化財リスト◆
「わたらせ渓谷鐵道第一・第二・第三神梅トンネル(-かんばいとんねる)」
所在地群馬県みどり市大間々町桐原、群馬県みどり市大間々町下神梅
登録日平成21年(2009年)11月2日
登録番号10-0299、10-0298、10-0297
年代全て、大正元年(1912年)。
第三神梅トンネルのみ、昭和12年(1937年)に15mの落石防止覆いを増設。
構造形式煉瓦造り、及び、切石造り。擁壁付。
全長は、順に166m・27m・60m(第三トンネル本体は45m)。
戦後、トンネル内に待避所設置とモルタル防水工事を施工。
特記三つのトンネルが連続し、第三神梅トンネルはカーブしている。
トンネルのポータルは、全て煉瓦積みの馬蹄型。
特に第二神梅トンネルは、開業当時の様子が良く残っている。
(文化庁公式ページの国指定文化財等データベースを参照・編集。)

少し右カーブしている第三神梅トンネルは、トンネルを抜けると、下り勾配になる。
人家の無い木立の中を暫く下ると、再び上り坂になり、また下り坂になる。
基本的に上り勾配であるが、この区間はアップダウンがあり、勾配率の変化も激しい。
険しい路線の為、国鉄時代のものらしい木造保線小屋も、線路際に多く見られる。


(山中の線路と保線小屋。レールが三本あるが、一番右のレールは脱線逸走防止レールである。
   ※上り桐生行き列車の最後尾から、間藤方を撮影。)

(10kmポスト付近を走る。線路の周辺は、結構、緑が深い所が多い。
   ※上り桐生行き列車の最後尾から、間藤方を撮影。)

下り勾配途中の右手下に、山中に似つかわない様な小さな団地が見えると・・・
上神梅駅(かみかんばい-)に到着する。
この駅には、古い木造駅舎が開業当時のまま残っており、
わたらせ渓谷鐵道の木造駅の中でも、最も保存状態が良い。


(上神梅の町並みが見える。※上り桐生行き列車の最後尾から、間藤方を撮影。)

(花咲く上神梅駅。※上り桐生行き列車の最後尾から、間藤方を撮影。)

勿論、この駅も、国登録有形文化財に指定されており、帰りに寄ってみよう。
地元の方々が手入れをしているらしく、ホームや線路端に春の花々や桜が咲き、大変綺麗な駅だ。
列車は直ぐに発車して、再び、長い登り坂に挑む。



この先の線路は更に険しくなり、半径200m級の急カーブや岩の切通しが連続し、
渡良瀬川の川崖の上を走る。
この岩の間を通り抜けるのも、わたらせ渓谷鐵道の独特な醍醐味を感じる所だ。
なお、この区間の渡良瀬川は、見えたり、見えなかったりしている。


(上神梅〜本宿間の渡良瀬川。線路は川崖の上なので、高さがかなりある。
   ※上り桐生行き列車最後尾から、間藤方を撮影。)

アップダウンをひとつ超え、簡易線規格最急の半径160mの急カーブ上にある、
登録有形文化財の深沢橋梁(ふかさわきょうりょう)を渡ると、
上神梅駅から所要時間3分程で、本宿駅(もとじゅく-)に到着する。


(深沢橋梁を渡る。※上り桐生行き列車の最後尾から、間藤方を撮影。)

(上り勾配の途中にある本宿駅。※上り桐生行き列車の最後尾から、間藤方を撮影。)

深沢橋梁は、デッキガーター二連30mあり、渡良瀬川支流が合流する場所に架かっている。
本宿側のコンクリート製橋台は、昭和23年(1948年)の大型台風・カスリーン台風で壊れた為、
造り替えられたそうだ。この鉄橋を渡り、線路を曲がりながら少し登ると、本宿駅がある。

◆国登録有形文化財リスト◆
「わたらせ渓谷鐵道深沢橋梁(ふかさわきょうりょう)」
所在地群馬県桐生市黒保根町宿廻・みどり市大間々町上神梅
登録日平成21年(2009年)11月2日
登録番号10-0296
年代大正2年(1913年)竣工。
昭和13年(1938年)、昭和14年(1939年)、昭和23年(1948年)改修。
構造形式鋼製デッキガーター2連、橋長30m、橋台2台及び橋脚1台付。
特記本宿側のコンクリート製橋台は、昭和23年(1948年)のカスリーン台風で
壊れた為、造り替えられた。
(文化庁公式ページの国指定文化財等データベースを参照・編集。)



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運転士の運転の妨げになる為、全て、最後尾から後方風景を撮影しています。
進行方向の間藤方の写真は、上り桐生行き列車の最後尾から撮影しています。
朝は露出不足の為、午前中の写真を使っています。

(※)
初期の国産レールのレールの重さは、ヤード(約90cm)当たりのポンド表示になる。
現在、用いられているメートル当たりのキログラムは、大凡、その数字の半分になる。
例・「NO 75A 1907X」の刻印の意味は、
八幡製鉄所製、37kgレール、ARA-A規格(高速線用)、明治40年(1907年)10月製造。

2016年1月13日再編集
2016年12月7日再編集(文体変更・文章追加・画像整理)

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category: わたらせ渓谷鐵道1日目 29話

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