hmdの鐵たびブログ ローカル線の旅

のんびりローカル線の鉄道旅を、写真を中心に「見る紀行文」で長期連載しています。

【271】一富士、二煙突、三かぐや・・・岳南電車(1)上野駅から吉原駅へ、吉原駅下車散策。  


毎年恒例のローカル線の旅は、春の3月から5月に行くことが多いのだが、
年明け頃から、妙にソワソワとして、行きたい気分が盛り上っていた。
冬は日没も早い為、実質的な行動時間は16時前までと、約二時間近く短縮してしまうが、
空気が澄んで写真映りが良い事や、冬の風景も緑一色の夏よりも色彩に富むと思うので、
冬の旅に珍しく出かけようと思う。
然しながら、寒いのは苦手なので、暖かく、積雪の無いエリアが希望だ。

JTB時刻表巻頭カラーの路線図を開いてみる・・・
比較的至近の未訪問路線で、二路線程度訪問できそうな所が良いだろう。
以前から気になっていた、静岡県東部の岳南電車(がくなんでんしゃ)と、
愛知県東部三河湾沿いの名古屋鉄道蒲郡線(がまごおりせん)が、良さそうだ。
また、何回も訪問しているが、締めに大井川鐵道にも立ち寄りたい所だ。
冬の大鐵は未訪問であり、気温の低さで蒸気が綺麗に上がるそうなので、見たいと言うのもある。
早速、一泊目の宿泊地を静岡駅西の藤枝に決め、ネット予約しておこう。

さて、当日の早朝4時に起床し、旅装を整えて、地元からの始発電車で上野駅に向かう。
残念ながら、青春18きっぷの発売期間前なので、普通切符を手配する為に
上野駅中央改札口横のびゅうセンターに立ち寄る。
岳南電車の乗換駅は、沼津駅西の吉原駅であるが、若い窓口担当嬢に聞くと、
往復切符にすると切符の有効期間が、行き帰り合計されて6日間になるそうなので、
蒲郡線乗換駅の蒲郡駅までの往復にし、吉原駅は途中下車にしよう。
上野から蒲郡までの往復運賃は、10,800円になり、片道5,400円分になる。
在来線のみで行くので、青春18きっぷとほぼ同額と思えば、リーズナブルだ。

上野から、上野東京ラインで行くのも良いが、30分以上待つので、東京駅まで移動する。
東京始発の東海道本線熱海行きに乗車しよう。
上野駅の駅弁屋で手配した朝食を摂るのと、朝の通勤ラッシュを避ける為、グリーン車を奮発。
5号車二階建てサロの二階席中央に陣を取り、吉原まで約3時間の旅だ。

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上野542 京浜東北線 505A 磯子行
550
東京607 東海道本線 727M 熱海行 グリーン車(E231系3000番台15両編成)
759
熱海802 東海道本線 1421M 静岡行 モハ211-5014(211系+313系6両編成)
841
吉原
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根府川駅付近からの東海道本線東京口の難所を越え、広大な太平洋がチラホラと見える様になると、
JR東日本とJR東海の境界駅である熱海駅に到着する。
国鉄時代は、静岡までの直通普通列車も多かったが、
JRに移行してから乗り換えが必要となったので、少々不便だ。
いつの間にか、急行東海名残の唯一の静岡直通325M列車も、無くなってしまった。
国鉄時代末期設計の211系とJR東海標準車の313系併結の6両編成に乗り換え、
熱海と函南間の伊豆半島の根元を貫通する、長大トンネル・丹那トンネル(たんな-)に突入する。
7.8kmあるほぼ直線状の丹那トンネルは、昭和9年(1934年)開通当時、
国内第二位の長さを誇っていた。
箱根に続く活断層帯を掘り抜いた為、異常出水や落盤事故で、70名近い殉職者を出し、
15年もの工期が掛かった相当の難工事だったそうだ。

トンネル出口の静岡方主要駅である、三島駅と沼津駅に到着。
「いずっぱこ」の愛称で呼ばれる、伊豆箱根鉄道駿豆線(-すんずせん)の乗換駅である三島駅は、
乗降が多いと思いきや、少な目であったが、沼津駅から大勢の乗客が乗り込んできた。
静岡方面の通勤通学客であろう。吉原駅は沼津駅から5駅先・20分程度なので、大した苦痛も無く、
車窓の富士山も徐々に大きくなってくると、8時40分に吉原駅の島式ホームに降り立つ。

ホームに降り立つと・・・静岡方山側に、岳南電車のホームが見える。
古い連絡跨線橋があり、JRのホームから直接行く事が出来るが、先に吉原の街中を散策したいので、
JRの改札口から途中下車しよう。改札係の若い駅員氏に、楕円小判の途中下車印を押して貰う。
この途中下車印が沢山押されるのも、鈍行乗り鉄の楽しい所でもある。

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先に、この吉原の町を少し散策してみよう。
江戸時代創建の地元の大古刹である、妙法寺【万字マーク】が旧東海道沿いにあるので、
今旅の安全祈願も兼ねて行ってみよう。駅南口から線路沿いに、沼津方に約10分歩く。
この線路沿いの道路は初期の東海道であるが、今は地元の生活道路となっていて、
東海道本線の北側に日本製紙の大工場が広がり、巨大なコンビナートが脇道から見える。

この吉原は富士市南部にあり、富士山南麓と富士川東岸に広がる、駿河湾沿いの町である。
元々は、東海道の14番目の宿場町・吉原宿として栄え、現在は、江戸時代の特産品であった駿河半紙を
ルーツとする、製紙の町として有名だ。晴れた日には、駅からも、富士山が大きく見える。



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(製紙コンビナートと富士山。)

妙法寺は、「毘沙門さん(びしゃもん-)」として親しまれ、毎年二月中旬の旧正月期間に大祭がある。
日本三大達磨市のうち、最大規模の市が立つそうで、数十万人の人出と露天が1km以上も沿道に並び、
「東海一の高市(たかいち)」と言われる程の賑わいだそうだ。
寺であるが、鳥居や注連縄があるのは、富士山信仰と習合しているらしく、
本殿も南向きではなく、海を背に、富士山に向かって北向きに建っている。
小生も最初は神社だと思い、参拝時に二拝二拍手一拝してしまったが、本来は不要である。

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(寺でありながら、参道に鳥居や注連縄がある。太陽や海を背に、北向きに建っている。)

本尊の毘沙門天は、聖徳太子の作とされ、出世開運の仏として信仰されているそうだ。
元々は、富士山信仰登山の山伏達が禊をした道場として開基した寺だそうで、
本殿前の香炉堂は、極彩色の中華風であるのが面白い。

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(龍の極彩色の飾りがある中華風の香炉堂。願を掛けた煙が龍となり、成就すると言われる。)
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(木造建築の本殿。巨大達磨も鎮座する。右隣りのインド風建物は、錬成道場である。)
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(本陣内。右手に巨大な達磨が鎮座している。)
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(本殿前から振り返ると・・・富士山が正面に見える。)

この鈴川町の住宅街の中には、富士山を模した円錐形の富士塚【名勝マーカー】もある。
室町時代、富士山信仰が盛んだった頃は、この付近の海で身を清め、
浜の石をひとつずつ塚に奉納して、登山祈願をしたそうだ。
ここが、本来の富士登山の起点地(登山口)である。
現在、発掘調査をしているそうで、頂上に鎮座する浅間神社の石祠は取り外されているが、
参道のある位置に立つと、富士山と重なって見えるのがポイントである。
今日の天気は晴れであるが、風が強く、富士山は大きな笠雲を被っているのが残念だ。

富士塚は関東各地にもあるが、それらとは性質や構造が違うそうで、
室町時代後期から江戸時代初期頃の築造と言われ、はっきりしていない。
なお、塚前の灯籠には、江戸時代中期の享保2年(1717年)の刻印がある。
江戸時代末期の絵図には、この塚は、「天ノカク山(天香久山)」と記されているそうだ。

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(鈴川の富士塚。高さは約4.5m、直径約15mある。富知六所浅間神社境内になる。
 近年、崩壊防止の為にコンクリートで覆われたが、頂上部は取り払われる予定。)

近くの田子の浦港【錨マーカー】も、見てみよう。
なお、駅の南側の鈴川町は、潮の香りもせず、あまり港町の感じがしない。
駅の南側は、鈴川砂丘と言う、海抜10-20mの小高い丘状になっている為であろう。
かつては、鉄道開通以降、男爵や有名歌舞伎役者の別荘が建ち並ぶ風光明媚な場所であったそうだが、
明治末期の大津波により壊滅し、以降は、草競馬場、桃畑を経て、現在の住宅地になったそうだ。

住宅地最南端の大きな防風防砂林の端の小高い場所に、公園がある。
木造の大きな展望台があるが、補修工事中だったので、土手から港を眺めよう。
Y字の形をした田子の浦港は、江戸時代からの駿河湾の主要港のひとつで、
現在は、製紙関連の倉庫が多く建ち並び、石油備蓄基地や旭化成の大工場もある。

昔は、この港付近に吉原宿があったそうだが、江戸時代の大地震による津波で壊滅した為、
内陸部に移転した。その為、それ以降の吉原付近の東海道は、凸状に迂回している。
かつては、港を横断する渡しの船もあったそうだ。

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(田子の浦港と富士山。)

小一時間見学し、そろそろ、岳南電車の吉原駅に戻ろう。



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【参考資料】
現地観光案内板
岳南電車沿線マップ(岳南電車発行)
鈴川の富士塚見学者向けパンフレット(富士市教育委員会・平成24年発行)
アイラブ岳鉄(鈴木達也著・静岡新聞社刊・2001年)

※脇道のコンビナートと妙法寺は、追加取材時の撮影。

2016年12月21日再編集(画像入れ替え・校正)

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category: 岳南電車 全13話

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