hmdの鐵たびブログ ローカル線の旅

のんびりローカル線の鉄道旅を、写真を中心に「見る紀行文」で長期連載しています。

【16】南アルプスとアプト式山岳鉄道を訪ねて・・・大井川鐵道井川線(1)千頭駅から、川根小山駅へ。   


大井川鐵道井川線は、本線終点駅である千頭駅(せんず-)から、
更に、大井川上流の井川ダム湖畔にある井川駅を結ぶ、路線長25.5kmの険しい山岳鉄道だ。
あまりにも険しい地形の為に土砂災害も多く、頻繁に運休する路線でもある。



元々この井川線は、電力会社の大井川流域のダム建設の為に敷設され、
ダムの完成後は、ダム設備保守や地元産木材の輸送に活躍した路線である。
鉄道設備や車両は、中部電力が所有しており、大井川鐵道に運行を委託している。
現在は、「南アルプスあぷとライン」と言う愛称が付けられた観光路線になっている。

此処で、井川線の略史を見てみよう。
千頭駅まで大井川鐵道本線が開通した6年後に、大井川ダムまで敷設されたのが始まりとなっている。

昭和10年(1935年) 軌間762mmで、千頭駅〜奥泉大井川堰堤駅間が開通。
          (奥泉大井川堰堤駅は、既に廃止。現在のアプトいちしろ駅付近。)
昭和11年(1936年) 軌間1,067mmに改軌。
          (本線と同じ軌間になる。但し、トンネル等はそのまま。)
昭和29年(1954年) 井川駅の先の堂平駅(貨物駅・現在は廃止)まで延伸・ルートの一部変更。
昭和34年(1959年) 大井川鐵道に運行を委託(観光鉄道化と駅多数開業)。
昭和46年(1971年) 井川駅〜堂平駅間の1.1kmを廃止。
昭和48年(1973年) 定期貨物列車の廃止。
昭和56年(1981年) 川根小山駅から奥泉駅間のルート変更。
平成2年(1990年)  アプトいちしろ駅〜接岨峡温泉駅間を新線に付け替え。
            アプト区間が開通(アプトいちしろ駅〜長島ダム駅間)。
平成21年(2009年) 全線ATS(自動列車停止装置)を整備。

開通当初から牽引の機関車は、蒸気機関車ではなく、
内燃機関(当初はガソリンエンジン)の機関車を導入していた。
また、改軌をしたのは、大井川鐵道本線に直通運転をする為との事。

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【停車駅】 〓→主な鉄橋
千頭1322==川根両国==沢間==〓==土本==川根小山
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千頭駅の一番山側の6番線、井川線専用ホームに向かおう。
ホームにある大きな観光看板が目を引き、これからの旅を期待させてくれる。
なお、千頭駅の標高は298m、終点井川駅は686mで、高低差388mを登って行く。

IMGP1471.jpg

6番線ホームには、列車が既に入線している。
大井川鐵道本線と同じ軌間1,067mmだが、車両限界が小さいので、車両は軽便鉄道の様だ。
背が高い人は、注意しないと、客車の乗降口や天井に頭をぶつけてしまう。
また、井川線の列車は、全て機関車と客車の客レ運行となり、車掌も乗務している。

IMGP1473.jpg

井川行き下り列車は、安全の為にディーゼル機関車が客車を後押しして、急勾配を登る。
今日は、観光ハイシーズンの期間の為、最大連結数の客車7両編成となっている。
なお、地元では、井川線の機関車や列車を、通称「エンジン」と呼ばれている。

井川線専用機関車の形式名はDD20形と言い、このDD203「Brienz(ブリエンツ)号」は、
昭和58年(1983年)日本車両製造、車体長8.0m、自重20t、B-B軸配置、
アメリカ・カミンズ社設計の355馬力ターボディーゼルエンジンを搭載している。
なお、カミンズエンジンの国内鉄道車両の搭載は、恐らく、このDD20形が初めてであろう。

最高時速は40kmしか出ないが、井川線の特性に合わせており、同形式6両が活躍している。
また、一両毎に愛称が付けられており、うち4両は、井川や寸又などの地元の由来から、
残る2両は、姉妹提携先のスイス・ブリエンツ・ロートホルン鉄道の由来になっているとの事。

定刻の13時22分、「ファーン」と、タイフォンを鳴らして出発となる。
今日は、大勢の観光客が乗車しており、特に井川方の先頭車は人気で満員である。
なお、客車間の貫通扉は無いので、走行中の車両間の移動は出来なくなっている。
自分は、長編成が良く見える、後方に乗車しよう。

次の川根両国駅は、千頭の町の最北端にあり、直ぐに到着。
この駅には、井川線車両の点検整備を行う両国車輌区と保線区が置かれていて、意外と広い。
また、以前は、井川本線と平行して、貨物線が複線の様に千頭駅まで敷設されていたそうだ。
本線でのSL列車運行前は、新金谷駅前のプラザロコ内で展示している蒸気機関車の
牽引による観光列車が、千頭駅から川根両国駅間の貨物線で運行されていた。


(グーグルマップ・川根両国駅付近空撮)

IMGP1479.jpg
(井川方に駅舎の様な建物が見えるが、駅舎ではなく、乗務区詰所になっている。)

川根両国駅を発車後、左急カーブを曲がると・・・
駅名の由来になった両国吊り橋(長さ145m)の下を潜る。
此処から、本格的な急カーブと急勾配の山岳線が始まるので、心準備しよう。

IMGP1480.jpg
(千頭は、遠江国と駿河国の国境の町であった由来からの橋名である。)
IMGP1482.jpg

大井川西岸沿いに線路が敷設されており、二本のトンネルを通過。
次の沢間駅を過ぎて暫く走ると、大井川、寸又川と横沢川の3つの川が合流する所があり、
そこに架けられた鉄橋の三叉橋(みつまた-)を渡る。
左窓正面奥の横沢川と右からの寸又川が合流して、三叉橋の下を潜り、大井川に合流する。
橋も低い為に川面に非常に近く、以前は、鉄道吊り橋だったそうだ。
国土地理院ウオッちず 三叉橋

IMGP1484.jpg
(左窓の正面が横沢川、右が寸又川。)
IMGP1483.jpg
(ふたつの支流は合流してから、右窓の大井川に合流する。)

この付近になると、大井川の川幅も狭くなり、水も凄く綺麗になってくる。
沿線の見処では、車掌氏の観光案内放送があり、時速20km程度と自転車並みに減速したり、
徐行運転をするので、ゆっくりと車窓を楽しむ事が出来るのが良い。

なお、沢間駅周辺は、大井川両岸に集落が点在し、少し開けている場所になってる。
昭和43年(1968年)まで、寸又峡や寸又川上流に沿って走る軌間762mm軽便鉄道の
千頭森林鉄道が分岐していた連絡駅で、ホーム横にその遺構が残っている。
一時期は、大間集落と言われた寸又峡温泉に行く観光客も、輸送していたそうだ。
また、当時の千頭駅から沢間駅間は、レールが三本敷かれた三線軌条になっており、
千頭森林鉄道の車両が、井川線に直接乗り入れる事も出来た。
現在、寸又温泉郷に当時使用された機関車と客車が、静態保存されている。

◆千頭森林鉄道について◆
昭和6年(1931年)第二富士電力により、沢間駅から千頭堰堤駅まで初開通した
全長41.0kmの長大森林鉄道で、沢間駅から千頭堰堤駅(せんずえんてい−)20.4kmは、
森林鉄道一級線として、更に上流の栃沢駅までの12.6kmを二級線として建設。
更に、大間川支線(二級線)6.0kmやロープウェイ・牛馬道等もあった。
井川線と同様に、寸又川のダム建設と木材輸送の為の鉄道で、ガソリン機関車を使用していた。

次の土本駅は、四軒の民家と小規模な茶畑があるだけの秘境駅となっており、
その内の三軒が土本姓のことから、この駅名になっている。
現在は、道路と橋が通じているが、以前の交通手段は完全に井川線のみだった為、
急患等の緊急時は三叉橋を渡って、沢間の集落まで行ったそうだ。

土本駅から川根小山駅間は、大井川の大蛇行をゆっくりと、うねる様に走る。
先頭車は、運転台が付いている制御客車なので、運転士が乗務している。
半径50〜100mの急カーブと急勾配の連続で軋む音が凄い為、
金切り音が嫌いな人は、苦行かもしれない。


(国土地理院 電子国土Web 三叉橋と大蛇行付近。)
IMGP1485.jpg
(土本駅から川根小山駅間の大蛇行付近を走る列車。崖にへばり付く様に走る。)

大井川の蛇行に沿って、廻り込む様に右に大きく曲がり、短い二本のトンネルを通過すると・・・
列車交換可能駅である川根小山駅に到着する。
ホームの高さは非常に低く、大変細い22kgレールを使っているが、保線状態は良好である。
駅の開業は、昭和34年(1959年)8月、起点の千頭駅から5.8km地点、所要時間約23分、
所在地は榛原郡川根本町字小山、標高354m(千頭から+56m)の無人駅である。

今日は、ベテランの車掌氏と若い車掌氏が乗務しており、乗務指導を受けている様だ。
なお、客車のドアは、手動の外締め式の為、駅到着時の乗降と戸締め確認が忙しそうである。

IMGP1486.jpg
IMGP1487.jpg

「ファーン」とタイフォンが一声し、再び、森の中を登って行く。
この先は、大井川沿いにあった旧線を迂回する第9号トンネルを通過する。

IMGP1488_20160120092935d6d.jpg



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2016年1月20日再編集
2016年5月31日再編集(文体変更・画像整理)

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category: 南アルプス井川線紀行 全4話

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